ハスモンヨトウという作物の葉を食害する昆虫がいる。

苦手な人もいるだろうから写真は控えておくが、食害するのはヨトウガというチョウ目(旧:鱗翅目)の蛾の幼虫だ。

漢字で書くと夜盗蛾で昼間は土に潜っていて、夜に地表に現れて葉をかじる。


ある程度の大きさ(中齢幼虫)になると殺虫剤が効きにくくなると、天敵(大半は日中に活動する)はダメ、殺虫剤はダメとどう対策すれば良いのだ?というラスボスみたいない昆虫がいる。

弱点といえば、どうやら寒さに弱いらしく、露地では日本の冬に越冬できないらしく、北日本ではヨトウの被害は少ないらしい。

ハスモンヨトウ - Wikipedia


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Daphniaさんによる写真ACからの写真


どうやらヨトウはハウス内で越冬しているらしく、近年のハウス栽培の発達によって被害が増した昆虫だと言えそうだ。



と言いたいところだけれども、


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東海大学出版部から出版されている教養のための昆虫学の昆虫の飛翔の章で、佐賀でのハスモンヨトウの研究の記載が予想を超えた展開となっていた。

研究報告の前に触れておきたいこととして、ハスモンヨトウは佐賀県でも越冬が難しいとされている。

佐賀県で越冬が難しければ、日本のほとんどの県で越冬は難しいと見て良いだろう。

※ハウス等の施設による越冬は除く


それを踏まえた上でどうやら中国南部や台湾からの気流に乗って、日本へと長距離移動してきている可能性がある。

※観測は雄のみで雌については不明

藤條純夫 東アジアにおける春から初夏に起こるハスモンヨトウの海を越えた移動 - 植物防疫 第68巻 第1号(2014)


ハスモンヨトウのハウスでの越冬の対策は何とかできたとしても、長距離移動の方はどうにも出来なさそうなので、やはりヨトウのラスボス感は変わらない…


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