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農道の縁で自生しているイネ科の草の葉が遠くから見ても赤くなっているのがわかる。

この草は花の形状と株立ち具合からおそらくオヒシバと呼ばれる草だろう。

オヒシバ - Wikipedia


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赤くなった(もしくは紫)葉は教科書ではリン酸欠乏を疑うべきと記載されている事が多い。

その理由として、葉にアントシアニンが蓄積されるからという理由が記載されている。


アントシアニンが蓄積されると赤や紫色になる理由の背景はpHによるアントシアニンの色の変わり方を見るの記事で触れた。


このアントシアニンの蓄積に関して、長年疑問に思っている事がある。

それはリン酸はエネルギー蓄積に関する要素で、アントシアニンの合成に関してそれなりにエネルギーを使うはずだけれども、エネルギー関連のリン酸がなくて、アントシアニンを合成するのだろうか?


この疑問を解消してくれそうなものに紅葉があったので、イチゴの果実の熟成と紅葉に触れていく事にする。




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イチゴの果実形成で蓄積するアントシアニンの記事で触れたが、果実形成の為に光合成を行いたいが、光合成はストレスが多い為、遮光の意味合いでアントシアニンを合成して、光合成のギリギリのところを狙う。

遥か昔に植物が上陸にあたって獲得した過剰な受光対策


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紅葉の落ち葉が土に還る


続いて紅葉だけれども、


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紅葉に関して成美堂出版の里山さんぽ植物図鑑の269ページに下記のようなことが記載されていた。

秋に葉柄の箇所で離層が形成されて、葉で合成されたものが別の器官に転流できなくなる。

葉に糖が蓄積され、行き場を失った糖に日光が当たると化学反応でアントシアニンが合成される。


Cyanidin_3-O-glucoside

Yikrazuul - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

シアニジン 3-グルコシド


アントシアニンはフラボノイドの一種であるアントシアンに糖が結合した配糖体である為、日光が当たることによってアントシアンに糖が付与する反応が盛んになるのだろう。




残りの疑問はアントシアン(フラボノイド)がリン酸欠乏時に合成されるか?だけれども、おそらくこれは植物が有害な紫外線から身を守る為のフラボノイドに記載した通り、常日頃から光合成を行う際のフィルターとしてフラボノイドがあるので、リン酸欠乏になる前からフラボノイドがあって、リン酸欠乏になった時に余剰になった糖がフラボノイドに結合したと解釈して良いだろう。


最後に何故リン酸欠乏で余剰になった糖と表現したか?というと、リン酸と聞いて一番最初に思いつくものがアデノシン三リン酸(ATP)で、ATPは糖から取り出したエネルギーを使いやすい形で貯蔵するという意味合いが強く、貯蔵するものが少なければ、糖からエネルギーを取り出さない仕組みはあるはず。

電子伝達系でATPをたくさん作る


むやみに糖からエネルギーを取り出すと、葉の活性酸素の量が増えてしまうので、自己防衛の為に解糖はしないだろうし、糖の反応性の高さから、そのままの形で持ち続けたくない。

発生し続ける活性酸素

糖の還元性


リン酸欠乏で葉が赤か紫になるというのはこんな流れになるのかな?