前回のバニリルアミンの生合成の記事で、


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HotDogさんによる写真ACからの写真


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By Arrowsmaster - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link


トウガラシの辛さであるカプサイシンのバニリル基の方を見た。

※上の図の構造式の左側のベンゼン環がバニリル基


今回は脂肪酸の方を見ることにする。




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acworksさんによる写真ACからの写真


脂肪酸というのは、


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上の図のように炭化水素が鎖のように繋がったカルボン酸(末尾に-COOHがある)である。

※構造式はCとHが省略でき、各折り目にはCやHがあり省略されている

脂肪酸 - Wikipedia


炭素の長さによって名称が異なる。


上の構造式のようにCとCの間がすべて1本の線で書かれているものを飽和脂肪酸と呼び、

飽和脂肪酸 - Wikipedia


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By Mrgreen71 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link


一つでもCとCの間に二本線がある場合は不飽和脂肪酸と呼ぶ。

不飽和脂肪酸 - Wikipedia


ちなみに上の飽和脂肪酸の方が炭素数16のパルミチン酸{16:0}で、下の不飽和脂肪酸の方が炭素数16のパルミトレイン酸{16:1(n-7)}となっている。

パルミチン酸 - Wikipedia

パルミトレイン酸 - Wikipedia


植物体内で脂肪酸は細胞膜の重要な要素となっていて、不飽和脂肪酸は流動性が高く凍りにくいという特徴から、寒さ対策として不飽和脂肪酸を増やして耐寒性を増やすという話を以前聞いたことがある。

細胞膜由来のリン酸肥料の使いどころはどこだ?




実際に脂肪酸はどのように合成されるか?だけれども、

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アセチルCoAがくり返し付加されることでC2単位で炭素鎖が伸長する

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羊土社 基礎から学ぶ植物代謝生化学 27ページより引用


アセチルCoAは呼吸のクエン酸回路の前でピルビン酸から合成され、オキサロ酢酸と反応するところで挙がった。

クエン酸回路で電子をたくさん得る


アセチルCoAのCoAは補酵素A(コエンザイムA)と呼ばれ、


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補酵素A - Wikipedia


左からアミノ酸のシステイン、パントテン酸(ビタミンB5)、アデノシン三リン酸(ATP)の順で結合したもので、アセチルCoAはシステイン側にアセチル基(CH3CO-)が付加したものになっている。

システイン - Wikipedia

パントテン酸 - Wikipedia

アデノシン三リン酸- Wikipedia

アセチル基 - Wikipedia

アセチルCoA - Wikipedia


脂肪酸の合成の際はアセチルCoAのアセチル基の炭素2個が付与され、徐々に長い鎖になっていく。

生合成を更に追うのであれば、パントテン酸やATPで重要な核酸の合成も見なければならないが、キリがないのでここまでにしておく。


追記

アセチルCoAはメバロン酸経路の出発物質

トウガラシの赤い色素の合成を追う




カプサイシンの材料を見直してみると、これといった特殊な原子というものがないわけで、

各段階で適宜酸化還元反応が行えることが大事なのだと当たり前な結論に行き着く。

光合成の明反応

畑作を続けることは難しい


カプサイシンについての読み物

カプサイシンに関する詳細情報:農林水産省