養鶏農家から質問があった。

鶏糞堆肥の販売の前に成分分析を行わなければならないけど、測る度に数値に違いがあった。


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発酵鶏糞ができるまで1


① N : 2.0  P : 6.3  K : 5.9  C/N : 11.4

② N : 3.6  P : 3.9  K : 2.3  C/N : 6

③ N : 1.7  P : 4.8  K : 4.3  C/N : 11.9

※N:窒素、P:リン酸、K:カリ、C/N:C/N比

NPKを見るときは、どんな形の窒素かを想像する

山の木々の間にあるとある切り株で


この数字を見て、栽培ではどう使い分けるか?


最初に見るべき箇所はC/N比。

これでどれだけ熟成が進んでいるかがわかる。

熟成が進むほど、C/N比が高くなる。


何故か?


鶏糞に限らず家畜糞の熟成は、初期段階で可能な限り尿酸、尿素やアンモニアの揮発を行い、Nの比率ははやい段階で減ることになる。

発酵鶏糞ができるまで3:一次発酵編


というわけで、

② N : 3.6  P : 3.9  K : 2.3  C/N : 6

これはNの量が多いので、アンモニア態窒素が多く速効性が高い鶏糞であることがわかった。


目隠しで各々の鶏糞を判断してもらった時、②が一番臭いと言っていたらしい。


アンモニア態窒素が多い分、作物に与えると炎症(葉焼け)になりやすいことに注意。

硝化細菌が植物の根の周りで頑張ってる


畑作ではアンモニア態窒素はよろしくないけど、稲作の様な水を張った嫌気環境では窒素はアンモニア態になるので、②の鶏糞はどちらかというと稲作向けだと判断できる。

他二つは発酵が進んでいると判断でき、畑作向けであると言える。




① N : 2.0  P : 6.3  K : 5.9  C/N : 11.4

③ N : 1.7  P : 4.8  K : 4.3  C/N : 11.9


残り二つを見てみよう。


他にあった質問として、鶏糞の熟成が進むと数値はどのように変化するのか?だけど、ゆっくりながら現れるのはリン酸値の減少だろう。

鶏糞は元々リン多めと言われている肥料で、このリンは栽培にとって結構厄介な成分でもある。


phytic_acid_chelate

鶏糞の中にある有用だけど厄介な有機態リン酸


鶏糞の中にある有名なリン酸といえば、餌として与える穀物の中に含まれる貯蔵性の有機態リン酸であるフィチン酸と


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発酵鶏糞ができるまで2:成分編


餌として与えるリン酸カルシウム(通称:リンカル)である。

どちらも餌の未消化分で、元々鶏は餌の消化率が低いのでどちらもかなりの量が残る(らしい)。


有機態リン酸は熟成が進むにつれ分解されていく傾向にあり、リンカルも熟成の際に生成される有機酸によって分解されているかもしれない。

有機態リン酸であるフィチン酸のリン酸を切り取りたい


というわけで、鶏糞の熟成の指標として、C/N比が高くなる → リン酸の割合が減る。

この二つを見ておけば良いでしょう。


ちなみに鶏糞を使用する上で絶対に注意しておいて欲しいのが、鶏糞を使用すると知らず知らずの内にカルシウム過多になること。

石灰には気を付けろ


鶏糞に含まれる餌の未消化分である炭酸カルシウムとリン酸カルシウムが大量に含まれている。

鶏糞を使用する時は石灰を使用するのは控えよう。

石灰を使用しなくても良い程まで土の緩衝性は増えているから。

く溶性が土のポテンシャルを上げる


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