つれづれ

私が日々思うことのつぶやき

一日目

家に帰った父は、1階の仏間に用意した電動ベッドで寝て過ごすことになった。

ベッドに横たわりながら、外の景色を見て、「やっぱり家はいいなぁ」と呟いた。

落ち着くらしい。


家で過ごす間は、在宅ケアのお医者さんに見に来てもらうことになった。

優しそうなお医者さんと看護師さんだった。

トイレに行く時は、私の肩に捕まって、歩いた。


そして、父はお葬式の遺影の写真を選ばなきゃいけないと言った。

姉と母と私と父が食卓に座りどの写真がいいか皆で選んだ。

妙な感じだった。

今目の前にいる人は、元気じゃないけど、まだ生きていて意識もしっかりしている。

なのに、その人が確実に亡くなるであろうと思って、写真を選ぶ。


母が突然泣き出して、こういった。

「あなた、二人もいい娘を持って、よかったじゃないの」

父も泣いて頷いていた。

私達も泣きそうだったが、私は希望を捨てたくなかったから、泣かなかった。


晩御飯だけ2階で食べた。

おばちゃんが、父の希望をきいてこの時期ではさらに高いアワビを買ってきてくれた。

全部は食べれなかったが、少しでも食べれて満足そうだった。