前回のハチミツの美味しさと各種糖の甘味度の続き
ハチミツに含まれる主要な糖は果糖(フルクトース:単糖)、ブドウ糖(グルコース:単糖)とショ糖(スクロース:二糖)で、果糖 > ショ糖 > ブドウ糖の順に甘いということがわかった。
植物が光合成産物を体内に蓄積させるのが主にショ糖であり、ハチミツにはブドウ糖と果糖がたくさん含まれるということもあり、ハチミツの美味しさには糖の構成の他に知るべきことが見えてくる。
そのうちの一つが、榎本俊樹 ハチミツの成分特性 - 化学と教育 67巻 3号(2019年)に記載されているインベルターゼという加水分解酵素だろう。
インベルターゼというのは、
Don A. Carlson - Self-made with Inkscape and .svg glucose and fructose graphics from the CommonsこのW3C-unspecified ベクター画像はInkscapeで作成されました., CC 表示-継承 3.0, リンクによる
上のブドウ糖(左)と果糖(右)がグリコシド結合で繋がったショ糖(二糖)を加水分解で切って2つの単糖にする転化酵素で、
ミツバチは巣にショ糖を多く含む花蜜を貯蔵する際にインベルターゼで単糖にして貯蔵するらしい。
単純に考えて単糖にすることで水に含まれる糖の濃度が二倍になるわけで、浸透圧が倍増する。
果実を煮込んで砂糖をたくさん投入して作るジャムが腐りにくいというけれども、ハチミツのインベルターゼによる糖の転化も同じような効果であると考えて良いか?
ここで更に疑問が生じる。
※榎本俊樹 ハチミツの成分特性 - 化学と教育 67巻 3号(2019年) 135ページより引用
ハチミツの美味しさの要因を探るで掲載したグラフだけれども、大半の蜜源植物(特にソバ)でブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)の比で果糖の方が多くなっている。
ショ糖を転化すると、当量のブドウ糖と果糖が発生するはずだけれども、大半で果糖が多い。貯蔵の際にブドウ糖は何かに使用されているのだろうか?
ライチがブドウ糖が多いのかも逆に気になる。
どちらにしろ、ショ糖よりも単糖の方が平均値で甘いわけで、糖の個数が単純に二倍になったのであれば、ハチミツは非常に甘い食べ物であるということが良くわかる。