前回のリン酸欠乏で葉が赤や紫になることを考えてみるの記事でリン酸欠乏で葉が赤や紫になることを今までの知見から考えてみた。
これを踏まえた上で、
稲作の基肥で話題になる発根促進としてのリン酸に触れてみる。
栽培の教科書ではリン酸の説明が発根促進という事を時々書かれているのを見かける。
リン酸と発根にどのような関係があるのか?よくわからない。
リン酸はエネルギーの貯蔵やDNAの主である核酸の材料の一つで、細胞膜のリン脂質の成分でもあるから成長に重要であるということは自明だけれども、ピンポイントで発根促進に繋がるのはイメージしにくい。
そんな中、以前イネを含む作物の発根促進としてのイノシンを思い出した。
By Calvero. - Selfmade with ChemDraw., パブリック・ドメイン, Link
イノシンは上記のような構造をしていて、作物がイノシンを吸収すると発根が促進されるそうだ。
イノシンの構造を見ると、P(リン)がないじゃないか!ということだけれども、
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主にイノシン酸の左側のリン酸の箇所が外れて水酸基(-OH)が付与されることで生合成されるらしい。
次に気になるのが、植物体内でイノシン酸が合成されるか?だけれども、
大半の生物においてイノシン酸は2つの経路から合成されるらしい。
一つは光合成産物であるグルコースにリン酸が付与された後に少し手が加えられ、
Akane700 - Akane700, パブリック・ドメイン, リンクによる
リボース-5-リン酸を経て、アデニル酸(AMP)→ATPの中間体としてイノシン酸(IMP)が生合成される。
※ヌクレオチドの合成 - 福岡大学 機能生化研究室のページを参考
要約すると光合成産物とリン酸からエネルギーを貯蔵する物質を作る段階で発根促進の作用のある物質が生合成されると。
この内容を踏まえた上で、改めてリン酸欠乏で葉が赤や紫になることを考えてみるの記事の内容に触れると、作物体内でリン酸が多ければ、光合成産物で反応性が高い糖は核酸の材料になるけれども、リン酸が少なければフラボノイドに結合して赤くなると言えることになる。
前回の話が正しければの話だけれども…
追記
イノシンのもう一つの合成経路はATP経由なので触れる必要がないと判断した
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