農薬評価書 テブフェノジド - 厚生労働省 6ページより引用


テブフェノジドというヨトウを含むチョウ目の幼虫に強力な活性を示す殺虫剤がある。

作用機構はチョウ目の脱皮を促し、異常脱皮をさせることによって殺虫するというもの。


何故脱皮を繰り返すことによって殺虫することが出来るのか?

この農薬の作用を深く理解する為には、どうやら幼虫の成長について把握する必要がありそうだ。




ハイハイさんによる写真ACからの写真


知識不足で何の幼虫だかわからないが、

おそらくチョウ目(旧:鱗翅目)の幼虫だろう。


チョウ目の昆虫は完全変態という区分にあたる昆虫で、

卵から孵化した幼虫が大きくなり、蛹の期間を経て羽化して成虫となる。


幼虫と成虫(蝶や蛾)は幼虫とは全く異なる形をしていて食性も異なる。

このように幼虫と成虫の形が全く異なるものを完全変態と呼ぶ。

変態 - Wikipedia


ここで幼虫の成長に注目して、

昆虫を含む節足動物は何かを食べるだけでは大きくなることは出来ないらしく、

体を大きくする為には必ず脱皮という過程を経なければならない。


ヨトウであれば、幼虫の期間で5回程脱皮をしながら大きくなる。

この脱皮には幼虫の体内で幼若ホルモン(JH)と脱皮ホルモン(エクジソン)のバランスによって制御されているそうだ。

幼若ホルモン - Wikipedia

エクジソン - Wikipedia


幼虫体内において、

幼若ホルモンが多い状態で脱皮ホルモンが合成されると脱皮を行う。

幼若ホルモンが少ない状態で脱皮ホルモンが合成されると蛹を経て成虫へと羽化する。

朝倉書店 新版農薬の科学 72〜73ページを参考にした


ここでもう一点興味深い知見を追加すると、

昆虫は自身で脱皮ホルモンの基となるステロイドを合成することが出来ず、

植物由来のステロイドを摂取することによって脱皮ホルモンが合成される。


チョウ目の幼虫において、

体の材料になる葉を沢山食べることがきっかけで脱皮ホルモンも合わせて合成され、適切な時期に脱皮を行うことが出来るようになる。


ここで適切な量の葉を食べずに脱皮ホルモンばかり増えたらどうなるか?

体が小さいままで脱皮を繰り返してしまい、脱皮にはそれなりのエネルギーを要するので、異常脱皮によって死んでしまうことになる。


ということは、

幼虫が比較的小さい段階(若齢幼虫)で防除出来れば、少ない殺虫剤の量で多大な効果を発揮するということになる。

おそらくホルモンの話だから耐性も付き難いだろう。


更に都合の良いことに、

この殺虫剤はチョウ目の幼虫にのみ作用して、

天敵の多くは成虫であるが故、天敵には作用しない。


脱皮ホルモンについての記述で興味深い説明があったが、

それはそのうち触れることにしよう。


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