先日、マンゼブという農薬の成分の話題になった。


マンゼブというのは、


manzeb

マンゼブ Ⅰ.評価対象農薬の概要 - 環境省より引用


分子式が(C4H6MnN2S4)xZnyで表されるマンガン(Mn)、硫黄(S)と亜鉛(Zn)を含んだ化合物である。

分子式をざっくりと見たところ、亜鉛(Zn)が遊離してイオン化しやすいだろうと予想している。


作用機構を見ると、ジチオカーバメート系の殺菌剤であり、SH酵素や金属酵素を阻害することにより殺菌活性を有すると考えられている。


金属酵素といえば、


325508

星屑から生まれた世界 - 株式会社 化学同人


星屑から生まれた世界という良書でタンパクと金属の捉え方をより洗礼出来たので、おそらくだけれども、マンゼブにある金属酵素の阻害というのは、


i-w_series

星屑から生まれた世界 - 株式会社 化学同人 38ページより引用


I-W系列の法則に従って考えられることができるはず。




上記で紹介した本で生物は金属と出会うことで、今まで出来なかったようなすごいことができるようになった。

という表現で記載されていたページの事を参考にすると、


例えば、ヘム(タンパク)周りで、


Heme_b

By Yikrazuul - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link

ヘム - Wikipedia


ヘムの真ん中に鉄が入ると酸素を結合したり、酸化還元の反応を示すけど、ヘムの真ん中にマグネシウムが入ると光合成時の受光の際のエネルギーの獲得に関与するようになる。


こんな感じで、あるタンパク(特に酵素)で何の金属が入り込むか?によって働きが大きく変わる酵素が他にもある。

タンパクは取り込んだ金属の結合力を頼って、組み込んだ金属によって変化を与える物質が異なってくる。


これを踏まえた上で、


i-w_series

星屑から生まれた世界 - 株式会社 化学同人 38ページより引用


再び、I-W系列を見ると、金属には結合力の指標がある。

単純なイメージだけれども、結合力が強ければ強い程、切り貼りできる物質が強くなり、植物では最も強固なリグニン周りは、最も強力な銅(Cu)を利用している。

リグニン合成と関与する多くの金属たち


銅よりも強いものとしてアルミニウムがあるけれども、アルミニウムは結合力が強すぎて、細胞内に溶けている様々な物質を動けなくする(作用出来なくする)ということで、大事な生理作用を潰してしまうので毒性があると考えられる。

酸性土壌で生きる植物たち


銅が生命活動ギリギリで且つ最強の作用があるということになるのね。




話は冒頭に戻って、


manzeb

マンゼブ Ⅰ.評価対象農薬の概要 - 環境省より引用


亜鉛を含むマンゼブと、


i-w_series

星屑から生まれた世界 - 株式会社 化学同人 38ページより引用


I-W系列を再び見てみると、亜鉛(Zn)は一番右端の二番目に結合力がある金属となる。

亜鉛の強さがマンガン(Mn)や鉄(Fe)を利用していた酵素タンパクに割り込んで、まったく違う作用の酵素に変えてしまう。

鉄過剰症で見えてくるマンガンの存在


これがマンゼブの作用点である金属酵素の阻害ということになるのだろうな。




農薬の散布は対象となる病原菌には大量の亜鉛を与えて様々な酵素を変化させてしまうけれども、植物のような大きな生物であれば、亜鉛は微量要素の一部として活用され、それ故、マンゼブには予防薬としての側面があるという話題が挙がるのだろうな。


関連記事

先生に覚えておけと言われたジンクフィンガーを私はまだ忘れていません