植物とトレハロースに引き続き、トレハロースの話題を進める。
トレハロースというのはグルコースを2つα1-1結合でつなげた二糖で、他の二糖を挙げてみるとショ糖(スクロース)も二糖に当たる。
スクロースはグルコースがα1-2結合で繋がったもので、トレハロースとは少し構造が異なる
ショ糖と言えば、野菜や果物の甘味の話題でよく挙がる二糖だ。
揚げたニンジン、焼いたニンジンはなぜこんなにも甘いのだろう?
なんでこのタイミングでトレハロースの話題を挙げたのか?というと、酵母入りエキス入り肥料の効果で触れたように酵母の話題がよく挙がるので、酵母について深く知っておかないといけないだろうと判断した。
取っ掛かりとして、
化学同人の酵母の生命科学と生物工学という本を読み始めた。
この本は素晴らしい。
内容は最新の研究の知見をまとめたものなので、解明されていないギリギリの難易度の高いものになっているが、各賞が理学的側面と工学的側面の両方で構成されており、生命についての解明と工業的な意義が交互に繰り返されていて、解明は難解でも、工業的側面によって有用性がよく分かるようになっている。
酵母にほぼ触れていなかった身として、産業としての酵母がビールやパン以外でも多岐に渡っていることが驚きだった。
という書評はここまでにしておいて、トレハロースに話を戻す。
酵母においてのトレハロースはエタノールや高温ストレスに晒すと、細胞内のトレハロース濃度が上昇するという報告がある。
高温ストレスの方に焦点を絞ると、高温によって起こるわかりやすい現象として、何らかの機能をもったタンパク内の繋がりが熱によって切れて不活性になることがある。
卵のタンパクはゆで卵にして白くすると、その後どんなに冷やしても元の状態に戻らないという現象のことで、この現象のことを変性と呼ぶ。
変性したものやタンパクの合成の際に誤って凝集したものは細胞に対して毒性を持つ可能性がある。
タンパクの合成に関して、アミノ酸が直鎖に結合して、正しく折りたたまれることが大事になるけれども、正しく折りたたまれる為にはシャペロンという物質がタンパクに働きかける必要があり、トレハロースはシャペロン様の作用があるとされる。
高温ストレス等で細胞内のトレハロース濃度が上昇し、高温ストレスによってタンパクは変性しやすくなり、トレハロースはタンパクの安定に貢献している。
植物が菌根菌と共生した際に、植物の根の方にトレハロースが蓄積するという報告があることを以前紹介した。
植物は菌根菌に光合成産物の糖を渡し、菌根菌からトレハロースを受け取る。
そこには一体何があるのだろうか?
読み物
トレハロースやLEAタンパク質により誘導される生体の乾燥耐性メカニズムに関する実験的・理論的研究 - 低温生物工学会誌 Vol. 63, No. 1, 1~10, 2017