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レンゲ栽培の田のイネの出穂数を見てみるの記事までで、運良く得られたレンゲ米栽培と、レンゲ栽培以外はすべて栽培を真似しているという比較区の水田という2つの環境の比較によって、イネの生育について触れてきた。

おそらくこの2つの栽培環境がなければ、稲作について調べるということはなかっただろう。


いろいろと稲作について見てきたので、そろそろ斑点米について見ることにしよう。




稲作の主要害虫の一つとして、登熟時に


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KI-TSUさんによる写真ACからの写真


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Kekoさんによる写真ACからの写真


カメムシ(上の写真はホソヘリカメムシ)が穂の籾の汁を吸うことで、中の実に黒い斑点ができる。

この斑点が付いた米を斑点米と呼び、見た目が悪かったり、養分が若干減っていたりする。

斑点米 - Wikipedia


稲作において斑点米はメジャー過ぎて、JAの講習では稲作農家がカメムシに効く農薬の話題が殺到するらしく、逆に農薬の話題以外はほぼ挙がらないという現状がある程だ。

新しい農薬が出ては地域全体で一斉に撒かれ、昆虫側ですぐに耐性が付いて農薬が効かなくなるという話題もよく聞く。

厄介な事に、益虫(カメムシを捕食するカリバチ)の方は都合よく耐性が付かず、薬害によって死んでいくという問題が多発し、問題は年々悪化の傾向を辿る。

夏季に北日本水田地帯で発生が見られる巣箱周辺でのミツバチへい死の原因について - 農研機構


上記の背景の元、ふとカメムシの事で発表された研究報告を思い出した。




害虫に殺虫剤抵抗性を持たせる共生細菌を発見 -殺虫剤抵抗性は害虫自身の遺伝子で決まるという常識を覆す- (共同プレスリリース 2012年4月23日)- 農業環境技術研究所

上記の研究報告を要約すると、ホソヘリカメムシ(以後カメムシと略す)の消化管の一部に細菌と共生できる器官がある。

カメムシは共生する細菌を土壌にいる細菌から選んでいるという。


農薬というものは、畑や田以外のたとえば地下水から川へ移行した際に薬効があってはいけないので、土壌の微生物等に分解されるということが販売される上で大事だったりする。

殺虫剤ももちろん上記と同様で対象となる昆虫への散布以外は代謝や分解されることで無毒化される必要があるわけで、カメムシに使用している殺虫剤も無毒化する細菌が土壌中にいる。


地域で一斉に殺虫剤を使用したら、カメムシは殺虫剤を無毒化できる細菌を優先するわけで、地域全体で殺虫剤を無毒化できる細菌が増殖する。

だから農薬はすぐに効かなくなりつつ、益虫はいなくなるので、対象となる害虫は年々増え続ける事になる。




他の国はどうだか知らないが、化学の専門的な教育なしに農家は日常的に環境にたいして影響力の強い化学合成物質(農薬)を使う事ができる。

化学の教養なしに使用するものだから、専門家が驚愕するような薬剤の使用が日常的に発生している。

JAが発生予察という形で使用する農薬を支持し、地域全体で一斉に指定農薬が使用されるので害虫の耐性を得る速度は加速し、益虫が死滅する速度も加速する。

病害虫発生予察情報 - Wikipedia


病害虫の被害を減らしたければ、農薬の使用からの脱却をしなければならない時期に差し迫っている。

病害虫の予防は御早めに


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