今年はいろんなところで、

ヨトウ対策として有効成分がフルキサメタミドの農薬の話題があった。



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フルキサメタミドは、節足動物のGABA作動性クロライドイオンチャンネルを選択的に阻害し、神経の興奮抑制機能を惹起する。その結果、過度の興奮が起こされることで殺虫効果を示すと考えられている。

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フルキサメタミド - 農林水産省 9ページより引用


フルキサメタミドの作用点を理解する為には、神経でのGABAの働きを理解する必要がありそうだ。




acworksさんによるイラストACからのイラスト


昆虫に限らず、人を含む脊椎動物には神経というものがあり、

脳からの命令を神経が伝達し、神経から離れた部位を動かすことが出来る。


上の図で見る通り、

神経は複数の神経細胞(ニューロン)が繋がることによって形成し、

神経細胞 - Wikipedia


acworksさんによるイラストACからのイラスト


シナプスと呼ばれる神経細胞の接合部位で神経伝達物質というものを介して次の神経細胞に情報を伝達している。

シナプス - Wikipedia


動物においてGABAは抑制性の神経伝達物質で、

何らかの刺激によって興奮した神経をGABAで抑制して落ち着かせるところを、

フルキサメタミドによってGABAを抑制し、神経の鎮静を抑制して、過度の興奮を引き起こす。


この話題は、有機リン系殺虫剤の作用機構の記事でも触れたが、

有機リン系との違いは有機リン系は動作の命令系の神経伝達物質であるアセチルコリンを、

伝達後の使用済みのアセチルコリンの分解をブロックすることで命令させつづける作用であったが、

フルキサメタミドは抑制の命令をブロックして神経を鎮静させない。


有機リン系の殺虫剤に耐性を持たれて使用できなくなったとしても、

フルキサメタミドは効き続けるということになる。


GABAは昆虫に限らず人を含む脊椎動物でも神経伝達物質として使用されているとなると、

フルキサメタミドは人体にとって有害ではないのか?

と思うだろう。


ここで面白い話題が一つあって、

フルキサメタミドに関する説明で、「節足動物のGABA作動性クロライドイオンチャンネルを選択的に阻害」とあった。


クロライドイオンチャンネルというのが重要で、

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抑制性シナプス伝達には,ヒトの場合 γ-アミノ酪酸受容体(GABAAR)とグリシン受容体がかかわるのに対して,昆虫ではGABAAR受容体とグルタミン酸作動性塩素チャネル(GluCl)がかかわる。特にGluClは,脊椎動物には見られないリガンド作動性塩素チャネルであることから,昆虫選択的な殺虫剤の標的として重要である

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松田一彦 特集:次世代農薬への挑戦―抵抗性機構の解明と環境調和型殺虫剤の開発 - 神経作用性殺虫剤のターゲット:ゲノム情報,多様性および調節 - 植物防疫 第63巻 第12号(2009年) 19ページより引用

※γ-アミノ酪酸 = GABA


要約すると、

昆虫と人では、GABAの使い方が異なり、フルキサメタミドは昆虫のみを標的に出来ると記載されている。

※人にはGABA作動性クロライドイオンチャンネルがなく、フルキサメタミドはGABA作動性クロライドイオンチャンネルに作用する


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