農業史、肥料を扱うにあたって忘れてはならないのが、ユストゥス・フォン・リービッヒと彼が提唱した無機栄養説だろう。

ユストゥス・フォン・リービッヒ - Wikipedia


リービッヒは化学者で、あらゆる植物の栄養源は腐植のような有機物ではなく、炭酸ガス、アンモニア(または硝酸)、水、リン酸、硫酸、ケイ酸、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどの無機物質であるという無機栄養説を唱えた。


さらに最小律という植物の生長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量のもっとも少ないものにのみ影響されるとする説も唱えた。


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(画像:4-3-2 肥料 啓林館より引用)


リービッヒの最小律といえばドベネックの桶が有名だろう。

リービッヒの最小律 - Wikipedia


100年以上を経て、一部異なる点が発見されたけど、この説は現代の栽培でも十分に利用できる説となっている。


この説がベースになっている証拠として、欠乏症が発生したらその要素を追加すれば良いということが至るところの指導で言われている。

苦土と書いてクド。マグネシウムのこと


シンプル故に使い勝手の良い理論ではあるんだけれど、ここには大きな穴がある。


例えばカルシウム欠乏、カルシウム欠乏は土壌のカルシウムが少ない時に発生すると思いきや、植物の生理の観点を加えると、土壌中のカルシウムが過剰になっている時でもカルシウム欠乏が発生する。


これがなぜ発生するか?を説明しだすと長くなるので割愛するが、とにかくリービッヒの最少律だけで判断していると、あそこの作物はカルシウム欠乏でよく見られる尻腐れだぞと、カルシウムを追肥で与えカルシウム欠乏が悪化して、カルシウムを追肥し続けるというやばい指導が行われていたりする


栽培というのは難しいね。