前回の人は鉄鍋由来の鉄を摂取しても活用することができるのか?の記事で、人が鉄鍋から溶け出した鉄を摂取した後に利用できるのか?という疑問について探った。
前回では人体では酸化された鉄(Fe3+:3価鉄)であっても利用可であることはわかったけれども、鉄鍋から溶け出した状態の酸化鉄(おそらくFe2O3)の摂取自体が可能であるか?はわかっていない。
というわけで、栄養としての鉄を更に深堀してみることにする。
厚生労働省の(2)微量ミネラル ①鉄がわかりやすかったので参考にすると、ヘム鉄と非ヘム鉄に分けるらしい。
ヘム鉄はその名の通り、ヘムに配位したもので2価鉄の形状で吸収しやすい。
非ヘム鉄はヘム鉄以外の鉄で、上記の無機鉄等で3価鉄で吸収しにくい。
非ヘム鉄は吸収の際にビタミンC等の還元剤と合わせ、3価鉄を2価鉄に還元した後に吸収される。
「鉄」の食事摂取基準と多く含む食品を紹介! - 森永製菓等の栄養に関する読み物等には動物性の食品にはヘム鉄が多く、植物性の食品には非ヘム鉄が多いそうだ。
これらの内容を踏まえた上で、今知りたいのが、
鉄分が多いとされるコマツナ等の軟弱葉物に含まれる鉄の構造がある。
おそらく、光合成時に電子を運搬するための鉄だから、非ヘム鉄になるだろう。
この疑問を解消すべく検索をしてみたら、古い論文ではあるが、大倉一郎等 非ヘム鉄 - 有機合成化学 第39巻 第11号(1981)に非ヘム鉄の分類が記載されていたが、主に挙げていたのが、光合成の明反応-後編の記事で触れた鉄硫黄タンパクであった。
鉄硫黄タンパクは、光合成時にマンガンクラスターで水から得られた電子を他の器官に運搬する際に関与する電子伝達体で、頻繁に電子を受け取ったり手放したりしている。
鉄硫黄タンパクの硫黄は硫黄を含むアミノ酸の含有量が多いということで、システインあたりになるだろう。
鉄硫黄タンパク以外に注目されている非ヘム鉄があるらしいが、それは次回に触れることにする。