腸管上皮細胞の糖鎖と腸内細菌叢の細菌たちの記事までで腸管上皮細胞の糖鎖の先端にあるシアル酸周辺の話題に触れてきた。


話は再び、



名古屋大学出版会から出版されている糖鎖生物学 生命現象と糖鎖情報の話題に戻る。


ヒト大腸の腸内細菌叢でもっとも多く存在する嫌気性細菌でバクテロイデス・テタイオタオミクロンという細菌がいる。

この細菌はエネルギー源や自身の糖鎖の構成材料として、


Edgar181 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる


デオキシ糖のフコースを利用する。

フコース - Wikipedia


細菌は腸上皮細胞の糖鎖からフコシダーぜという酵素で先端にあるフコースを切り取り、フコースが足りない時は宿主の腸細胞にシグナルを送り、フコースを含んだ糖鎖の形成を促す。


腸管上皮細胞内のフコースを含む糖鎖にはどのような働きがあるのだろう?と疑問になったので、検索してみたところ、

プレスリリース 精神的ストレスは腸管上皮の糖鎖構造を変化させる - 農研機構のページに行き着いた。


マウスにおいて、過度なストレスを与えると、腸管上皮細胞の糖鎖で末端にフコースが付いている糖鎖(フコシル化糖鎖)の量が減ったという報告であった。


フコシル化糖鎖は宿主が摂取した食品成分に何らかの作用をする糖鎖であるらしく、フコシル化糖鎖が減るとそれらの成分との作用がなくなる。

これが宿主に対してどのような影響を与えるか?の記載はないけれども、おそらく消化に関するものなのだろう。


消化に関することだと仮定すると、過度なストレスによって摂取した食べ物から消化吸収できない成分が出てくることに繋がるかもしれない。


他に腫瘍免疫におけるフコシル化糖鎖の役割 Trends in Glycoscience and Glycotechnology Vol.22 No.127 (September 2010)という研究報告において、腸内において、フコシル化が細胞性免疫の自然免疫であるナチュラルキラー(NK)細胞の反応に対して重要である可能性が高いという記載もあった。

ナチュラルキラー細胞 - Wikipedia


NK細胞はウィルス感染寄りの自然免疫である為、腸内細菌叢の細菌の構成がウィルスの感染に何らかの影響を与えるという話に近づいてきた。


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