塩基性暗赤色土を探しに京都の大江山への記事で、蛇紋岩が風化してできるとされる塩基性暗赤色土の写真を撮影しに行ったことを記載した。
蛇紋岩が風化した土壌だけれども、様々な植物にとって過酷な土壌だとされ、蛇紋岩植生という名でよく見聞きする。
ここで気になるのが、植物にとって過酷な土壌の理由になるわけで、整理してみることにした。
水野隆文 蛇紋岩土壌における植物のニッケル過剰障害 - ペドロジスト 第 65 巻 第 1 号(2021)に蛇紋岩土壌についての記載があったので参考にする。
蛇紋岩土壌の特徴は貧栄養,高重金属類,高pHなどを特徴とする代表的な不良土壌ということになっている。
山と渓谷社から出版されているくらべてわかる岩石(文:西本昌司 写真:中村英史)で蛇紋岩を確認してみたところ、主な構成鉱物が蛇紋石、磁鉄鉱、クロム鉄鉱、ブルース石と緑泥石と記載されていたので、貧栄養であると明記してよいのか?疑問になるが、カリウムに焦点を当てると貧栄養になるので、そうしておく。
Rob Lavinsky, iRocks.com – CC-BY-SA-3.0, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
ブルース石は水滑石を指し、良質な肥料の水マグを指す。
蛇紋岩土壌で最も注目すべきは高重金属類だろう。
蛇紋岩土壌にはニッケルが豊富に含まれているとされている。
ニッケル(Ni)は元素周期表で鉄(Fe)の次の次に位置する金属で、鉄と似たような特徴がある。
このニッケルが植物にとって相当厄介であるらしい。
因みにだけれども、蛇紋石は1:1型粘土鉱物に分類される二次鉱物になり、単純に考えて、1:1型粘土鉱物が風化してできた土は排水性が不良となる(はず)。
植物にとってのニッケル過剰症は鉄欠乏を誘発するそうだ。
鉄欠乏の理由を読んでみたら、ニッケルが鉄の吸収を阻害するというわけではなく、鉄の吸収と同時にニッケルが吸収され、ニッケルが本来であれば鉄が入り込むべき箇所に入り込み、植物は鉄欠乏だと錯覚する。
鉄欠乏だと錯覚した植物は更に鉄を吸収しようとするが、鉄と同時にニッケルも吸収してしまい、鉄欠乏の錯覚が悪化する。
というのが、蛇紋岩土壌での植物のニッケル過剰症の予想であるそうだ。
この内容を読んだら、大江山は植物が育たない丸裸な山になるのでは?と疑問が生じるが、
実際のところはそうではない。
当然のことながら、蛇紋岩土壌に耐性を持つ植物がいるわけで、その耐性の内容を理解すれば、塩基性暗赤色土での栽培の攻略法を見えてくる。
耐性について見ていきたいが、話が長くなるので、次回以降に触れることにする。
-続く-