菌の生活環と不完全菌の記事で、菌(カビ)に二つの名前がある理由について触れた。

今まで菌に二つの名前がある理由はしっくりこなかったけれども、菌類のふしぎ 第2版 形とはたらきの驚異の多様性 - 東海大学出版部の本で菌の分類の歴史から丁寧に説明している為の明確なイメージを持てるようになった。


今回は前回の話の余談だけれども、菌の生活環には有性生殖の期間のテレオモルフと無性生殖の期間のアナモルフがあり、アナモルフの方しかわからなかった菌を不完全菌とした。

※上記の話は菌の分類の内、子嚢菌類(門)と担子菌類(門)に分類される菌に当てはまる


この不完全菌の中に、

oryzae

※画像はテレビアニメ『もやしもん リターンズ』公式サイト|スペシャルでダウンロードした


もやしもんという漫画で有名になったAspergillus oryzae(漫画ではオリゼーと呼ばれていた)ことニホンコウジカビが不完全菌扱いであった事に驚いた。

もやしもん - Wikipedia

コウジカビ - Wikipedia


漫画の言葉を借りると、人にめっちゃ見られているオリゼーでさえ、すぐにテレオモルフを見つける事ができなかったと。

すぐにコウジカビのテレオモルフについて検索してみると、山本七瀬 ・北本勝ひこ著 麹菌にも有性世代がある? ―ゲノム解析から明らかになったこと― - 醸協 第101巻 第10号(2006)に辿り着いた。


コウジカビのテレオモルフについて触れている雑誌の年が2006年になっていた。

菌の分類というものが如何に難しいかを物語っている。


コウジカビは長い間、アナモルフのみと考えられていたということは、酵母のように育種ができないとされてきたわけで、発酵蔵毎のコウジカビの個性は採取した箇所、もしくは変異体によるものだったのか?と疑問が生じた。


菌を勉強している方にとって今回の内容は当たり前なのかもしれないけれども、醤油とか味噌とかの身近な食品に関与していた菌が予想を超える未解明さに驚いた。


ちなみにコウジカビのテレオモルフを辿ってみると、A. oryzaeは家畜化された菌であるらしく、祖先はA. flavusである可能性が高いらしい。

A. flavusで検索をしてみたら、マユハキタケ科になっていた。

合わせて、マユハキタケ|京都府レッドデータブック2015のページも検索に引っかかった。


どうやらマユハキタケ科の菌のテレオモルフの生息条件が特殊かもしれない。


追記

コウジカビの交配育種に関する報告が2016年になっていた。

麹菌の不和合性機構の解明と有性生殖の発見による交配育種法の開発:農林水産技術会議