最近我が家では消防車がブームになっていて、消防車のおもちゃに粉末消火剤が模倣されたオブジェクトが付いていて、火に消火剤の粉を振りかけると何故消えるの?という話題になった。


粉というのは、


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上記の写真のことで、主成分はリン酸第二アンモニウム(NH4H2PO4)のものがある。

リン酸第二アンモニウムといえば、廃菌床堆肥の恩恵を得る為に無機リン酸の使用を見直すの記事で私が今後の社会情勢を加味して注目すべきリン酸の肥料と捉えている無機塩だ。


冒頭の質問に対して、リン酸第二アンモニウムを火に振りかけると何故消えるのだろう?と仕組みを把握していない事に気が付いた。

すぐに思い付いた事として、物が燃焼する際に必要な酸素をリン酸塩が吸収して燃焼を抑えるのか?ということがあるが、もしこれが正しいとして、肥料として使用した際に土の酸素量を減らしてしまうのでは?と疑問が生じた。


というわけで、リン酸第二アンモニウムの消火の仕組みを見てみることにした。




最初はWikipediaの記載を読んでみることにした。

消化器の消火原理を整理すると

・冷却作用

・窒息作用

・抑制作用

があり、どうやらリン酸第二アンモニウムは三番目の抑制作用で消化するそうだ。

消化器 - Wikipedia


リン酸アンモニウムのABC粉末薬剤は熱により分解し、僅かにアンモニアガスを発生するそうだ。

この反応を追えば、粉末薬剤の消火原理が理解できるかもしれない。


というわけで検索をしてみたら、犬童愛祐美 消防機器と化学 - 化学と教育 65 巻 10 号(2017 年)にたどり着いた。

上記の読み物によると、リン酸第二アンモニウムの消火時の反応は下記の通り。

NH4H2PO4 → H3PO4 + NH3

NH3 + 5OH → NO + 4H2O

上記の式はOHが何由来かわからないけれども、そこらへんを気にせず話を進める。


この過程で燃焼に必要なOH基を消費するため、燃焼連鎖反応が抑制されるそうだ。

更に粉末による窒息効果もあるらしい。

三好明 燃焼化学の第一原理 - 日本燃焼学会誌 第 51 巻 157 号(2009 年)


上記のリン酸第二アンモニウムの燃焼時の反応を見ると、リン酸第二アンモニウムは熱分解によりリン酸と一酸化窒素が発生するということが分かった。

であれば、リン酸第二アンモニウムの肥料利用の際に酸素を吸引するという心配は不要になりそうだということが分かった。