朝顔にはなぜこんなにも原形からかけ離れた花が多いのか?
それはトランスポゾンによって引き起こされているからだ
ということが考えられている。
トランスポゾンとは動く遺伝子と言われ、
朝顔ゲノムの中を動き回る。
トランスポゾンは外殻を捨てたウィルスの様なものだと例えていた人がいるぐらい、
ゲノムの中を動きまわる。
学部の頃の研究室の教授がトランスポゾンに夢中で、
しょっちゅうトランスポゾンの話をしていたのを思い出した。
※話題に挙がっていたのはレトロトランスポゾンの方だけど
実際、動く遺伝子と言われてもピンとこないだろう。
トランスポゾンというのは、
こんな感じで朝顔ゲノムの一部に無理やり入り込むことができる因子のことで、
入り込んだ箇所に定着はせず、
飛び出して、また他の箇所に入り込む。
※図では近接した箇所に挿入されているけど、実際は離れた箇所にも挿入できる
ゲノムから飛び出す際、数塩基のフットプリントを残し、
これがゲノムの形質発現で影響を与えることが多々ある。
トランスポゾンは自身の配列内に、自身を切り取ったり、ゲノムに挿入させたりといった酵素の設計図を持っており、
この酵素を細胞に合成させることによってゲノム内を移動できる様になっている。
それでは、トランスポゾンが動くことによって花が変化する話に入るけど、
朝顔の花の形成にとって超重要な遺伝子配列があったとして、
この配列の中にトランスポゾンが入り込んだとする。
花の形成にとって超重要な遺伝子配列は当然壊れるわけで、
配列にかかれていた超重要なタンパクは合成されないことになる。
もし、これが丸い花を形成するために超重要だった場合、
形成される花は上の様な丸い花ではなく、
こんな感じになる。
トランスポゾンが他のところに移動したとしても、
超重要な遺伝子配列には痕跡が残っているので形質はこわれたままになる。
ちなみに、
今回紹介したトランスポゾンを発見した研究者はノーベル生理学賞を受賞している。
アサガオは変異が多い植物である。
変異が多いということは大事な遺伝子が頻繁に潰されたり、
奇跡的に素晴らしい遺伝子配列が出来たりすることであって、
変異が多い植物を追い続けると、
植物にとって大事な、
いや生物にとって大事な遺伝子を発見出来たりする。
発見した遺伝子がどれだけの恩恵をもたらすか未知数なわけで、
アサガオには無限の可能性が秘められているといっても過言ではない。
今まで長々と書いたけど、
これを植物学に興味がない方に対して伝えたかった。
最後に、
夏休みの宿題でいやいやアサガオの観察をしている小学生共!
そして、なんとなく宿題を出している教師たち!
人生の大半を損しているぞ!