グリホサートは植物体内の何を潰す?で有効成分がグリホサートの除草剤はホルモンや主要なアミノ酸の合成の前駆体となるシキミ酸あたりの合成に関するEPSPSと呼ばれる酵素を阻害することにより、非選択的に植物を枯らすことができる。
ちなみにEPSPSと呼ばれる酵素は動物には存在しないので、直接的には人体には影響はないと考えられている。
ここで疑問に挙がることとして、ホルモンの合成にとって超重要なEPSPSを阻害することによって薬効を示すとするならば、巷に出回っているグリホサート耐性作物は散布されてもなんで生きていけるの?ということだけど、二パターンの遺伝子組み換えによってグリホサート耐性を得たらしい。
By Yikrazuul - Own work, Public Domain, Link
上の構造式がグリホサートだけど、おそらくこれがEPSPSの大事な箇所にうまくハマることによって不活性化するのだろう。
酵素の大事な箇所にうまくハマって不活性化させる様な物質のことを酵素阻害剤と呼ぶ。
グリホサートの薬効を無効化するためには、
・耐性を持つ植物内ではグリホサートが速攻で分解されれば良い
・そもそもEPSPSの大事な箇所が変異していて、機能は持つけどグリホサートがハマらなければ良い。
まずはグリホサートの自然環境下での分解だけど、土壌細菌のAchromobacterからグリホサート酸化還元酵素(glyphosate oxidoreductase: GOX)が発見されている。
この酵素を合成する遺伝子を作物の中に導入して耐性作物を得た。
もう一点のEPSPSの変異だけど、詳細は省くけど、トウモロコシ由来のEPSPSの突然変異により、グリホサートが効かない耐性酵素が発見された。
もとの酵素の構造と99.3%同一だがグリホサートによって阻害されない。
これらの話は下記のドキュメントに詳しく記載されている。
除草剤グリホサートに耐性をもたらす遺伝子とその酵素に関する一般的な情報についてのコンセンサス文書の14ページ
耐性獲得で主流なのは前者のGOXだろう。
ここで意識しておくべきこととして、自然環境下で植物自身の突然変異により、グリホサートが効かないEPSPSが誕生しているということ。
巷でグリホサート系の除草剤が年々効かなくなっているんだけどという話をよく聞くけれど、至るところでトウモロコシ由来の酵素で発見されたような突然変異が発生しているのだろうな。
もしくは、土壌細菌と共生していて、作物が細菌からGOXを受け取っていたりして…
そんな都合の良いことはなかなかないか!