種採りという名の経費でF1種子は
統計的に有利で
経営面で見ても特だよと記載したけど、
F1種子には大きな欠点がある。
私は学部は農学部で育種学研究室に所属していました。
なんで院で農学ではなく理学にしたのかは機会があれば書く。
育種学を研究するためには当然遺伝学というものが必要となり、
遺伝学を追求すると分子生物学というものも知っておく必要がある。
分子生物学というのは、簡潔に書くとDNAそのものを研究する学問で、
DNAは様々な要因によって制御されていることを知ることができる。
でだ、
育種研にいた頃に遅くまで研究や勉強をしているとよく先生が居酒屋に連れて行ってくれたわけだけど、
その居酒屋での話で興味深いものがあった。
それは
なんだかんだ言って地域に馴染んだ種はすごい可能性を秘めているということ。
植物と動物で大きく異なる点といえば、
DNAの大きさで道端にある小さな草でも人の何倍も遺伝子の量がある。
これは理学に転向した時の研究室の先生も講義で言ってたことなんだけど、
植物は動けないからこそ、発芽した環境が激変してしまったとしても生き残れる様に様々な機能を持っている
ということらしく、
普段の快適な環境ではそれらの機能が動くことはないはずだと。
ここらへんの制御を行っているのをクロマチンというタンパクだけど、
説明すると文量が膨大になるのでやめておく。
他にもあるけどそれは置いといて
学部の頃の話に戻って、
居酒屋での先生の話は地域に根付いた固定種はクロマチンの制御が良い感じになっているのではないかと考えていたらしく、
このクロマチンの制御を人為的にできないか?ということを日々考えていたらしい。
人為的云々はおいといて、
もし、地域に根付いた種は秘めたるポテンシャルが目覚るとするならば、
P世代を厳格にして、都度F1種子を生み出し、それを販売している限り、
その地域にあった究極の種というものは誕生しないことになる。
そもそも、
P世代を厳格にしている時点で、
F1種子は人の想像を越えた機能を持って生まれることはほぼないことになる。
ここで言う機能というのが、
ある地域特有の昆虫や病気に対する防御機構であったり、
その地域の土質にあった吸収の仕組みであるはずだから、
F1の持つ耐性というのは、
様々な地域にある病気や虫に対する耐性の及第点であって、
それ以上の耐性を得ていることはあり得ないことになる。
さらに
種採りも安定した環境でないと商売にならないということも忘れてはならない。
地域に根付いた種にどれほどの価値があるかは未知数だけど確実に価値はあって、
種を購入している限り、その価値を利用できないのは痛い。
F1の良さと固定種の良さを兼ね備えた種を得るためには、
統計学と遺伝学と選抜する根気が必要なんだろうね。