誰かと知り合う度に質問されることがあります。
なんで植物系の仕事をしているのにネットショップのCMSのSOY Shopの開発をしているのですか?と
※逆も然り
SOY Shop(ソイショップ)とは | 売れるECサイト運営ノウハウ(外部サイト)
丁寧に説明をすると、大体の方はなるほどと返答してくれます。
栽培とSOY Shopにはそれなりの深い関係があるので、今回は農業に関わり出してから、SOY Shopの開発に至るまでの話を書こうかと思います。
振り返るととても運の良い話でした。
大学院生の頃、植物学では日本で最上位に入る程の予算を獲得できる研究力の高いラボに所属していました。
そのラボは他の大学ではほぼあり得ない修士過程でNatureに掲載される院生を輩出する程のラボでした。
※ラボは研究室のこと
私はそんな素晴らしい環境にいたにも関わらず、博士前期2年次に休学(のちに中退)して、とある農業のベンチャーに創設メンバーとして参画します。
※創設メンバーといっても創業してから半年ぐらい経ってからの参画です。
※今でいうところのスタートアップです。
大学院では基礎植物学を専攻し、いわゆる純粋なサイエンスと呼ばれる程の深い領域で、あまりに研究が基礎であったことが後々私を助けてくれる様になります。
※学問は基礎であればある程難しくなる
最初に行った仕事は調査です。
縁もゆかりもない地域に住み込みで2年間程過ごしました。
ここでの出来事が色々運が良く、栽培の師が私に研究室では見ることの出来ない様々な現象を見せてくれたのです。
そのうちの一つが、栽培をはじめて半年ぐらいで遭遇した
作物の葉の上で食害しようしたイモムシがミイラ化していたものです。
師曰く、これは土作りで非常に満足出来た畑で良く発生するらしい。
確かにここで収穫出来た野菜は非常に美味しかった。
農学史にそれなりの知識があったので、この現象がBTタンパクによる卒倒病と似ていることがすぐにわかって、師にそのことを伝えた。
すると師から、この現象がどうして発生したのか?を説明してくれないかと頼まれます。
そうは言われてもすぐにはわかりません。
ある日、堆肥のまき方で師に注意を受けます。
指示したことをしていないではないか!と。
普通に考えたら私は正しい施用を行っていたのですが、師はそれが違うというのです。
試しにその場所をそのままにしてくれたのですが、確かに師が施用した箇所と私が施用した箇所では結果に雲梯の差が出たのです。
同じ資材を使っているにも関わらず…
私は師との違いこそが
この現象に行き着くとあたりをつけ、そこで何が起こっているかを調べたのです。
そこには非常に面白い現象がありました。
詳細は長くなるので何をどうまいたか?やどのような論文を見つけたかは割愛しますが、
師にそのことを伝えると、自分のやり方に自信を持てたと確実に収量を伸ばしていきました。
住み込みが終わりというか、縁もゆかりもなく同年代もほとんどいない農村での生活が本当に嫌で強制的に終わらせてきたのですが、
※自分の収入は野菜の販売からとれという背景で調査優先で無収入だったということも要因の一つ
栽培には関わっていなければいけないという暗黙の規則で、農業を始めたいという院の同期がいたので、提携という形で全てを丸投げして傍観していました。
一応、彼も院卒なわけで、人のやった過程には目を通す癖があります。
農業を始める時にお前は何を勉強したんだ?資料を全部よこせと、こちらが集めた資料とノートとWeb上にある非公開の日誌を渡しました。
彼は資料とノートをすべてコピーして、そこから栽培を始めたのです。
するとどうでしょう!
比較的短期間で高値で売れそうな野菜が収穫できたのです。
幸いなことにこの一連の流れはNHKの趣味の園芸 やさいの時間で取り上げていただきました。
起業というものに関わるとね、日銭を稼ぐために日々必死で、最初はダメダメでもそれなりに目利きになっていくもので、産業でどの箇所に課題があるのか?ということがわかってくるのです。
農業の仕組みとして、野菜の流通において仲介が何回かあり、市場では価格は相場に左右される。
野菜の価格が下がった時、市場に近い仲介から利益を確保するので、末端の取り分が減りやすい。
ここらへんを避けることができれば、新規就農者が比較的はやく経営が安定するのではないか?とそう思ったのです。
仲介を減らすということすなわち、自分で売り込まなければならない。
新規就農者には野菜の栽培でいっぱいいっぱいなのでそんな余裕はありません。
そこで考えたのがWebでの販売、つまりはネットショップですね。
ネットショップを開設すると決めたら次にどうするかと言ったら、どうやってネットショップを開設するか?です。
楽天といったWebサービスを利用するか?
それともEC CMSのパッケージを採用するか?
それとも自作するか?
当時、短期的な収益を得るために他のメンバーはWebのシステムの受託開発をしていました。
この頃の私はほとんどコードは書けなかったけど、お金を稼がなければなりません。
昼間は社内の開発者の代わりにヒアリングに出向いたり、マニュアルを整備したり、夜は会社のお荷物にならないためにプログラミングの勉強に当てていました。
※金曜日の夜から土日にかけて提携先の畑で作業
端折るけれども、その過程の中でSOY CMSというOSSが開発され、SOY CMSの設計理念を受け継いだネットショップの要望の元、SOY Shopのプロトタイプがありました。
しかし、ネットショップというシステムの開発は他アプリとは桁違いに開発が大変です。
あまりの大変故、SOY Shopはプロトタイプのまま捨てられていました。
この捨てられていたSOY Shopをダメ元で院の同期の販売に活用することを決めました。
決めてからというものは面白いもので、SOY Shopを勇敢な方が採用してくれて、その時のフィードバックが返ってくる。
これを採用してみたら、何故か野菜の販売の方が楽になった。
他にも返ってきたフィードバックを採用してみたら野菜の販売が更に楽になった。
自作して無償公開したことによって、各地から様々な業種のノウハウが私の元に集まってくる!
問題だと思っていたものがSOY Shopによって次から次へと解決していくではないか!
この頃には私はコードを書くことがたまらなく好きになり、SOY Shopの開発に没頭していくことになりました。
野菜が収穫出来た→売るのが大変→SOY Shopで野菜の販売の問題を解決
という流れで
私にとってSOY Shopも農業の事業の一部なのです。
SOY Shopの導入支援を事業として、様々な業種のネットショップの開設に携わり、その都度、業種ごとの特徴を知る機会を得ました。
導入支援の事業を介しても、古今東西様々な商売の仕組みを知ることができました。
とは言っても、もう退職していますが…
結局、10年間在籍していました。
余談ですが、
在籍中はスタートアップらしく金融業界の方のヘットハンティングや資金調達関連の業務を経験しました。
上場の経験はなしです。
現在は株式会社京都農販で技術顧問をしています。
今回の記事の続きのような記事
SOY CMSの開発元を辞めた後も開発を続ける心境をまとめてみた
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