前回、糠漬けの手順について触れた。
食材を糠漬けに漬け込むまでの間に整形・洗浄→食塩という手順があり、
食塩後に食材を糠漬けに漬けて、米ぬか内に住み着いている乳酸菌によって発酵を開始する。
ここで見るべきポイントは2つだね。
・食塩が食材に与える影響
・乳酸菌は何を発酵しているのか?(食材内の物質を発酵しているのか?)
この問に関する解は下記の論文を参考にする。
漬物工業の現況と新技術動向の294ページから295ページまで
漬物が漬かるということ
動植物の細胞は半透膜で囲まれている。これが食塩,砂糖,アルコールなどの溶液にふれると浸透圧で膜の耐圧機構がこわされ内からも外からも通じる透過膜になる。
野菜の風味が主体の漬物
野沢菜漬とか梅干はこの透過膜を通して食塩が細胞内に入り込み,中の糖,酸遊離アミノ酸,AMP(核酸関連物質),香・辛成分等と調和して細胞内で1種のスープを形成したものとみられる。野菜の持つ素材の味覚,香りが重視される漬物である。
野菜の風味と発酵産物の味の混った漬物
すぐき,発酵しば漬のような乳酸発酵漬物,米ぬかを使う乾燥たくあんのようなアルコール発酵漬物は前述のスープの糖が乳酸菌によって乳酸に変ったり,あるいは周囲の米ぬかの糖が酵母によってアルコールになったりして,風味の混和によってスープの内容物が複雑になったものである。発酵漬物と呼ばれて適正な発酵の進行が重視される。
どの生物も顕微鏡で確認すると細胞というものが組み合わさって構成されているわけだけど、
食塩を加えることによって、
※各細胞小器官の大きさはてきとう
こんな感じで細胞内に含まれているものが細胞の外へ出る。
※実際のところはスープが細胞内外を自由に移動できる状態になる
細胞の核(右上の丸い箇所)には核酸と呼ばれるものがあり、
下にある水色で囲まれた液胞という箇所には無機塩、ミネラルや糖などが溜め込まれており、
全体的にタンパクや脂質が分布している。
それらが細胞外に染み出し、乳酸菌によって分解されるというわけか!
これによって植物性の繊維質は残しつつ、
摂取時の養分の吸収効率を高めることになるのか!
他にも
糠漬けのぬか床である米ぬかも乳酸菌の発酵の対象となる。
というわけで、
米ぬかの一番基本的な発酵はデンプン質や脂質を分解して乳酸に変える反応と見て良いことになるので、
嫌気環境下でデンプンがブドウ糖になって乳酸になる。
※タンパクも発酵処理を経てアミノ酸になる
乳酸菌はデンプンを分解して乳酸を生成するだけでなく、
乳酸ごとに人にとって有用なビタミン等を合成するので、
乳酸以外の体に良い成分も糠漬け内に蓄積されることとなる。
ここで注意すべきは乳酸発酵は適切なpHがあるということ。
実際は乳酸菌自体が周囲環境のpHを4〜6程度に下げてしまうという現象がある。