クエン酸による食味の向上は安易に用いて良いものか?の記事で、クエン酸や酢酸の土壌への散布は根酸と同じような働きだと見立てて、土壌の鉱物からミネラル(肥料では微量要素と呼ばれる)の溶脱を起こし、養分を根に積極的に吸収しているはずだと記載した。
ここで合わせて土壌の鉱物は有限ではなく、過酷な栽培を続けていると当然劣化するので、栽培時のクエン酸散布が食味の向上等に繋がるからといって安易に行って良いものだろうか?と問題提示した。
ここでもう一点別の視点から話を続けてみる。
畑の土の土壌鉱物の構成は地域によって異なっている。
地域によっての構成の差については石灰岩の成り立ちから石灰性暗赤色土を考えるあたりの記事から感覚的に掴んでもらうとして、地域で鉱物に差があるならば、クエン酸や酢酸の散布による効果も当然地域によって差が出るはずだ。
例えば、
鹿児島県の桜島のように定期的に空から新鮮かつ粘性の低い火山灰が降ってくるような地域であれば、クエン酸等の有機酸を少し散布するだけで大量のミネラルが溶脱することは安易に想像できるが、
鳥取砂丘付近のようにただでさえ粘性が高い深成岩由来の土地で更に石英(SiO2)の含有量が高い土では、クエン酸を与え続けたとしても、ミネラルの溶脱はほぼ発生しないだろう。
クエン酸や酢酸は比較的弱酸だけれども、土壌のpHを意図的に下げたくないので、この手の地域では有機酸の散布は逆効果になる。
有機酸による微量要素の溶脱によって秀品率の向上を謳う栽培方法があるけれども、地域差を挙げて検討してみると、この手法には万能性はないことがわかる。
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