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前回の環境に優しい土壌消毒のダゾメットで、よく使用されるダゾメットがアブラナ科植物の防御反応の一つであるイソチオシアネートを活用していることがわかった。


ここで一つ疑問が生じるのが、


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※写真は私にとっての農業とSOY Shopより


アブラナ科とチョウ目(旧:鱗翅目)の関係ではないだろうか。


アブラナ科植物というのは特有の辛味成分のおかげで虫に食われにくいと言われるが、チョウやガの幼虫にはよく食害される。

辛味成分は今まで話題に挙がったイソチオシアネートのことで、チョウやガの幼虫はイソチオシアネートを無毒化できるように進化したと考えられている。


となると、ダゾメットの土壌消毒は実は最も除去したいガの幼虫(ヨトウのこと)には効かず、天敵を含め他の土壌生物が弱体化してヨトウの勢力が増すのではないか?ということが頭に浮かぶ。

※夏に畝上げする時の土壌消毒


ここで知るべきなのは、チョウ目の幼虫がどのようにしてイソチオシアネートを無毒化しているか?だろう。




チョウ目のイソチオシアネートの解毒を見る前に、イソチオシアネートそのものについて整理しておこう。


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By Fvasconcellos - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link

※Rの個所に何らかが入る


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イソチオシアネートは合成するアブラナ科植物にとっても毒性を示す物質である。

自滅しないようなアブラナ科植物の工夫として、ある細胞でグルコシノレートという物質を持って、他の細胞ではミロシナーゼという酵素を持っておく。


グルコシノレートは植物にとって無害で、グルコシノレートとミロシナーゼが反応するとイソチオシアネートに変わる。


健全に生育しているアブラナ科植物内で普段はグルコシノレートとミロシナーゼは区切られていて反応することはないけれども、虫による食害等で損傷すると各々の細胞から出て反応してイソチオシアネートになる。

植物の高温耐性とイソチオシアネート


上記の内容を踏まえた上でチョウ目のイソチオシアネートの無毒化を見ていく




今野浩太郎 植物の耐虫防御機構と植食昆虫の対抗適応機構を巡る最近のトピックス:食害時・食害場所特異的な植物防御と昆虫の防御回避の分子メカニズム - 北日本病虫研報55:1-10(2004)

上記のドキュメントにチョウ目のコナガがどのようにイソチオシアネートにどのように反応しているか?が記載されているので、ピックアップしてみると、


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今野浩太郎 植物の耐虫防御機構と植食昆虫の対抗適応機構を巡る最近のトピックス:食害時・食害場所特異的な植物防御と昆虫の防御回避の分子メカニズム - 北日本病虫研報55:1-10(2004) 3ページ目より引用


上の図でいうと、図のカラシ油配糖体が上記の説明でいうグルコシノレートに当たり、チオグリコシダーゼがミロシナーゼに当たる。


昆虫の作用は右側になり、ミロシナーゼに該当する酵素の作用に前に昆虫消化液中の酵素がカラシ油配糖体に作用して、グルコシノレートとミロシナーゼの反応を発生させないようにしている。


整理するとチョウ目の幼虫はイソチオシアネートを合成させないことによって回避しているということがわかり、ここではイソチオシアネート自身は無毒化していないことになる。


今までの流れだと、ダゾメットによる土壌消毒でチョウ目にも効果がある可能性は高いということになるが、まだイソチオシアネートの解毒の経路を持っていないとは言い切れないということは忘れてはならない。


となると、更に疑問に生じることがあるけれども、それは次の記事で記載することにしよう。


-続く-


追記

文中で紹介した論文中にホウレンソウの根が傷つけられた際に昆虫の変態ホルモンの類似物質で昆虫特異的に内分泌撹乱作用があるファイトエクジステロイドが誘導されるという記載があった