前回、菜の花に豊富に含まれると言われるイソチオシアネートが持つ解毒作用について触れた。
とは言っても解毒酵素誘導作用であって、
解毒酵素自体は見ていない。
今回は人体の影響よりも知りたい
植物体内ではイソチオシアネートは一体何に使われているか?
で、
早速検索してみてとある論文に行き着いた。
その論文というのが、
植物の熱耐性向上物質とその利用 沙漠研究25-4, 301-304 (2016)
というもの
読むと
By Ed (Edgar181) - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
イソチオシアネート(特にキャベツやクレソンで多く含む)フェネチルイソチオシアネートを植物に散布したところ、
高濃度では刹草作用、低濃度では高温耐性向上が見られたとのこと。
※論文中ではイネ(イネ科)とシロイヌナズナ(アブラナ科)に触れている
※前回の記事同様、イソチオシアネートをITCと略す
高温耐性についての話を進める前に、
高温障害というものに触れておく必要がある。
以前、植物ではないけれども酵母の高温障害と耐性について触れた記事がある。
植物の高温障害は酵母と同じで、
体内で重要な働きをしていたタンパクが熱によって形が変わり失活することがある。
この失活を変性と呼ぶわけだけれども、
失活したタンパクを放置しておくと、これ自身が老廃物に変わり、活性酸素の発生の原因になったりする。
植物における高温耐性は
失活したタンパクの修復であったり、無害な形に分解して排出することになる。
上記の働きを持つタンパク質のことを熱ショックタンパク質と呼ばれ、
英語表記でHeat Shock ProteinからHSPと呼ばれる。
HSPの合成に関して、ITCが合成の鍵の一種になっていると、冒頭の論文で記載されていた。
なぜ、ITCが高温耐性に貢献しているのか?
それを知るヒントして、ITCの発生するタイミングを知る必要がありそうだ。
ITCは細胞組織が損傷した際に発生する物質だと言われる。
By Benjah-bmm27 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
ITC発生の材料としてグルコシノレートというものがあり、
グルコシノレートがミロシナーゼという酵素によってITCになる。
グルコシノレートとミロシナーゼは普段は体内の別の個所にあるけれども、
細胞が損傷すると細胞からの出てきた内容物内にこれらが含まれ反応してITCになるという流れだ。
高温ストレスを受けた植物は、
タンパク質や膜系がダメージを受けることで活性酸素が発生し、更にダメージを受ける。
ダメージにより細胞から出てきた内容物らが反応しあってITCが発生し、
そのITCがHSPを誘導して変性したタンパクを修復しているのだろう。
何故、アブラナ科の植物にITCが多いのだろう?
個人的な勝手な想像だけれども、
アブラナ科の植物は寒い時期に旺盛というイメージが強い。
寒さに強いというのは逆を言えば暑さに弱いということになるわけで、
高温障害になる気温が他の植物よりも低いことが要因ではないだろうかと