私がチーズの製造が人類の英知だと感じたことを挙げると、伝統的な加工技術としてレンネット凝固がある。
これを学生頃に受講した畜産加工で知った時、人はレンネットをよく発見したなと感心したものだ。
レンネットというのは、母乳の消化の為に用いる酵素のことで、この酵素を得るために仔牛を屠殺して胃から取り出すらしい。
チーズの長い歴史において、仔牛の胃液の酵素が乳の貯蔵に有効であると、最初に試した人の心境というか好奇心に興味がある。
この行動力は人類の革命的な偉大な業績の一つだと言いたい。
このレンネットだけれども、
牛乳という白い要素がなかなか分離しない安定した物質に対して、乳酸発酵でpHを下げた後にレンネットの処理を行うと、白い物質が下に沈殿して、上澄みは透き通る。
上澄みは乳清(ホエイ)と呼ばれ、乳糖とミネラルが豊富に含まれているとのこと。
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pH処理 → レンネット処理 → 凝固して沈殿という処理を経て、チーズの原型であるカードが出来る。
※カードの形成はレンネット処理だけでなく、酸や熱でも凝固する
カードの形成には、
牛乳の白さがしばらく放置していても沈殿しない原理、タンパクの親水性と疎水性が関与したミセルの話が必要になっていてここでは触れない。
牛乳に含まれるタンパクのほぼ全てが乳タンパクのカゼインで、このカゼインがpH処理とレンネット処理を経ると、水に溶けにくい疎水性のカゼインが出来て、疎水性のカゼインがカルシウムと結合して沈殿する。
この沈殿したものが上記で触れたカードとなる。
最終産物であるチーズの栄養で、牛乳からチーズへの移行率が、タンパク、カルシウムや脂溶性ビタミンの移行率が高く、カルシウム以外のミネラルや水溶性ビタミンの移行率が低いことが納得できる。
※移行率については下記の記事に記載されている
※写真は長い熟成期間を要するパルミジャーノ・レジャーノ
このカードを加熱しながら圧搾したり、カビ等の菌を添加して熟成させたりすることで様々な種類のチーズに加工されていく。
チーズ自体は分子量の大きなタンパクや脂質が多く、味や風味が感じられないので、味や風味を出すために熟成が必要となる。
青カビにチーズの熟成を頼れば青カビチーズになるし、
プロピオン酸菌に熟成を頼ればエメンタールチーズとなる。
このように乳を凝固させて加工して出来たチーズのことをナチュラルチーズと呼び、そのまま利用されたり、プロセスチーズの原料となる。
さて、ナチュラルチーズについて触れたので、気になっているプロセスチーズの栄養価について触れたいが、今回の記事が長くなったのでここまでにしておく。
-続く-