汚泥肥料の特徴を把握しておく必要はあるだろうまでの記事で、リン酸の製造から使用までを俯瞰してみてきた。
肥料としてのリン酸は施肥後に土壌に吸着して安定しやすく、残留性が高い要素であると言える。
土壌分析でリン酸の数値が高い結果が返ってきたら次作は気を引き締めた方が良い
更に化学合成の過程を経て製造された水溶性(速効性)のリン酸肥料であっても、難溶性のFe型リン酸やAl型リン酸を含んでいることがわかり、吸着以前に施肥の時点で肥効に無駄が多い肥料であることがわかった。
※Feは鉄、Alはアルミニウム
土壌に蓄積したリン酸はレガシーPや遺産Pなんて表記されたりしていて、栽培に限らず社会情勢の面でも問題になっていたりする。
※感と経験に頼るベテラン農家が不安だからとリン酸を過剰に施肥してしまう傾向はリン鉱石の枯渇問題から見たら大問題。
土壌に蓄積したリン酸を改めて触れてみると、Ca型リン酸、Fe型リン酸、Al型リン酸と有機態リン酸がある。
※Caはカルシウム
今までの内容からCa型リン酸はく溶性を示すので、植物によって比較的早くに吸収される。
Fe型リン酸は畑作の輪作の稲作ではリン酸はどのようにして減っていくのか?の記事で触れたように稲作のように灌水して酸素のない嫌気状態にすれば可溶化する。
一つ飛ばして、有機態リン酸(主にフィチン酸)は土壌の微生物が活発になれば可溶化する。
最後にAl型リン酸(AlPO4)だけれども、アルミニウム(Al3+)とリン酸(PO43-)が強く結合しているため、植物にとって非常に利用しにくい形になっている。
このAl型リン酸は活性アルミナが豊富にある火山灰土壌で最も深刻な話題になっている。
アルミニウム(Al3+)に鉄(Fe3+)のように還元してFe2+になり、リン酸との繋がりを弱め、可溶化しやすいという特徴があれば良いのだけれども、アルミニウムにこの特徴はなくて、植物にとって利用が難しい。
この話題に対して、久しぶりに作物はなぜ有機物・難溶解性成分を吸収できるのか 根の作用と腐植蓄積の仕組み - 農文協を引っ張り出してきたら、伝統的な栽培にヒント有りということで、
火山灰土壌でのラッカセイの栽培からAl型リン酸の可溶化について触れていた。
ラッカセイは低リン酸耐性作物として優秀であるらしい。
実はこの話題は以前、ラッカセイの根の脱落細胞にはリン酸鉄を吸収しやすくなる機能があるらしいの記事でFe型リン酸の可溶化の話題として触れたが、Al型リン酸の可溶化の方でも有効である可能性は高い。
この詳細は次回以降の記事で見ていくことにしよう。