再びプロセスチーズとは何だろう?までの記事で、
チーズには栄養価だけでなく、知の宝庫としても優れた食材であることを紹介した。
チーズの長い歴史から様々な熟成法が確立され、
各熟成法には化学の知見が豊富に含まれている。
その中で非常に印象に残っているのが、
乳の凝固酵素であるレンネット(凝乳酵素)にまつわる話だ。
ナチュラルチーズとは何だろう?の記事で記載したが、
レンネットというのは仔牛の胃から抽出した酵素で、
酵素を得る為には当然仔牛を屠殺しなければならない。
始めて知った時は、
肉としての利用ではない目的で仔牛を屠殺するのか。
と衝撃だった。
このレンネットに対して、
「チーズを科学する」(幸書房) - NPO法人チーズプロフェッショナル協会
毎度おなじみのチーズを科学するから現在の凝乳酵素の状況を抜粋してみると、
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現在、チーズの商業的生産に利用されている凝乳酵素は、子ウシ第四胃起源のレンネット、(学名は省略)カビ由来のアスパルティックプロテナーぜに加え、キモシン遺伝子のクローン化が可能となり、遺伝子組み換えレンネットが生産され、利用が拡大されつつある。
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※キモシンはレンネットの一種
上記の本の54ページより抜粋
ここで注目すべきは、
数あるカビの中から仔牛のレンネットに類似した酵素を発見したこと。
仔牛のレンネット等の遺伝子を発見して、大腸菌や酵母に組み込み生産させることができたこと。
レンネットの代替酵素によって仔牛を屠殺する機会が減ることに繋がった。
※カビや酵素を酵素を獲得する為に殺菌しているけれども、おそらくここらへんは動物愛護の観点からは気にされない。
微生物学や遺伝子工学の発展によって、
乳の凝乳酵素をはやく手に入れられるようになった。
チーズの加工に引き続き、
レンネットの獲得でも人類の英知を感じざるを得なかった。