土壌の保水性の向上を考える3の記事で、セルロース(植物の繊維)の分子間架橋について見た。
※図:甲野裕之 水を持ち運ぶ化学 ―木質を用いた高吸水性樹脂の開発― 化学と教育 66巻8号(2018年) 395ページ 図3より引用
二本の繊維の間にエチレングリコールジグリシジルエーテルを挟むことによって、繊維の隙間が増えて吸水性が高まるそうだ。
エチレングリコールジグリシジルエーテルは自然環境下では存在しないので、自然環境下でセルロース間で分子間架橋を形成するような化合物は存在するか?を調べてみることにした。
衣類の話題になるが、茶谷悦司等 架橋反応による綿ストレッチ織物の伸長回復性の向上 - あいち産業科学技術総合センター 研究報告 2014でヒントになりそうな話題があった。
綿ストレッチ織物に対して、クエン酸等の有機酸で処理した場合に伸び率等は変化するか?という内容で、何らかの変化はあった。
変化の要因は多価カルボン酸とセルロースとのエステル化反応において、多価カルボン酸は酸無水物形成を経由してセルロースの水酸基と反応してエステル架橋が生成するそうだ。
多価カルボン酸というのは、
クエン酸のようにカルボキシ基(-COOH)を複数個持つような有機酸を指す。
※カルボキシ基を持つ有機酸をカルボン酸と呼ぶ。
エステル化反応というのは、
カルボン酸とアルコールが加水分解をして、Oを挟んで結合(上の図ではC-O-R'の箇所)することを指す。
上の図であれば、下向きのヒドロキシ基(-OH)の箇所がクエン酸と反応するのだろう。
今回の内容は土壌中でも日常的に起こりうる反応なので、保水性の向上に関与しているかもしれない。