土壌の保水性の向上を考える2の記事でポリマーとは何か?と天然のポリマーであるセルロースの保水性について触れた。
セルロースが保水性を持つならば、それを土に混ぜ込めば良いという話になるが、すぐにその話に移行するのは勿体ない。
なぜならば、セルロースを原料とした高吸水性樹脂(紙おむつ等で使用されている)の開発の話題があって、セルロースの保水性の向上のヒントがあるからだ。
というわけで、今回はセルロース由来の高吸収性樹脂について見ていくことにする。
※図:甲野裕之 水を持ち運ぶ化学 ―木質を用いた高吸水性樹脂の開発― 化学と教育 66巻8号(2018年) 395ページ 図2より引用
上の図は繊維状になったセルロースが縦に並んでいる図になる。
上のセルロースの繊維と下のセルロースの繊維のヒドロキシ基(-OH)で水素結合らしきものが発生して、繊維同士が繋がっている。
水は繊維と繊維の隙間に入り込むわけだけれども、甲野裕之 水を持ち運ぶ化学 ―木質を用いた高吸水性樹脂の開発― 化学と教育 66巻8号(2018年)に拠ると、繊維の間の隙間は狭くて、水はあまり吸収せず、絞ったらすぐに水が出てくる為、保水性も乏しい。
※上記の内容はあくまで樹脂の開発上の意見であって、土壌では十分保水性は向上する。
セルロース由来の高吸収性樹脂の開発には、繊維と繊維の隙間の体積を広げるといった処理が必要となるそうだ。
その処理というのが、
※図:甲野裕之 水を持ち運ぶ化学 ―木質を用いた高吸水性樹脂の開発― 化学と教育 66巻8号(2018年) 395ページ 図3より引用
※図:甲野裕之 水を持ち運ぶ化学 ―木質を用いた高吸水性樹脂の開発― 化学と教育 66巻8号(2018年) 395ページ 図3より引用
カルボキシメチル化でセルロースのグルコース残基のヒドロキシ基の一つをカルボキシメチル基に置換し、その反対側にエチレングリコールジグリシジルエーテルを付与し、二本の繊維間で分子間架橋を形成して、繊維間の隙間を大きくすることで、水を保持出来る空間を広げるそうだ。
もし、このような反応が自然環境下でも行うことができれば、ただ植物繊維を鋤き込むよりも保水性は格段に向上させる事が可能となるわけだ。
それを知る為には、自然環境下に存在する化合物で繊維間の分子間架橋を形成出来るものが存在するか?から調べる必要がある。