数年前、モーニングという漫画雑誌で
『もやしもん(13)<完>』(石川 雅之)|講談社コミックプラス
農学部を舞台とした農学漫画があった。
農学部といっても酒造関係なので厳密にいうと農芸化学科だろう。
主人公は地味ではあるけれども、菌を表紙のような形状で見ることが出来、コミュニケーションすることも出来るため、当然、こんなスキルを教授陣はほっとかないだろうと、入学早々、酒造系の研究室の教授にスカウトされ研究室に入り浸るという異例の展開を繰り広げる。
この漫画のすごいところは、菌達はどこに居て、普段何をしたがっているのか?が丁寧に書かれていて、とにかく有機物を醸したい(代謝に利用したい)とか、他の菌群と陣取り合戦をしていて、いち早くコロニーを作りたいとか
共存しているのであれば、どの菌群に加担するか?
という描写が時々見られ、
これらの考え方は作物の病気の話にも通ずる。
栽培者がこのもやしもんで知っておくべき内容で、当ブログで今まで紹介していないものに日和見菌というものがある。
日和見菌は人体の病理で日和見感染というものがあり、
日和見感染とは微弱な病原性の菌群が体内に常にいて健康な体では全く影響がないけれども、弱って抵抗性がなくなった時に微弱な病原性であっても病気になってしまう病状を指す。
上記の内容は病理の話であって、環境によって振る舞いを変える菌が、生態系では大多数を占めるというイメージで良いだろう。
土壌中などの菌群を丸の大きさで表して、普段は栽培にとって有益な菌と有害な菌が均衡しているとする。
例えば、左の有益な菌群が活発になると、
日和見菌群は有益な菌に加担して、一気に環境が良くなる。
逆も然りで、有害な菌群が優勢になると日和見菌群は有害な方に加担する。
この話を土作りを重点的に行っている方に伝えると、良くなるのも悪くなるのも一気にくるから納得出来ると言う。
この話は未熟堆肥を活用する際に痛感する内容であるはず。
何故ならば、環境によって堆肥の熟成が活発(有益)になるか、作物の病気が蔓延する(有害)か?の二択だから。
ここまで伝えて結局何が言いたいか?というと、栽培中に殺菌剤を使用する場合は、先に栽培環境の改善有りきだよということ。
先日紹介した遺伝子の水平伝播によって、有害菌群が殺菌剤の耐性を得て、それが日和見菌に水平伝播したとあっては、破産街道まっしぐらになるだろう。
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