前回の台風でも倒伏しないイネで玄武岩質的な地質の地域での赤色粘土の客土を行っている水田では台風時の暴風での倒伏がなかったという話を聞いた。
何故、倒伏に耐えられる程の茎の強度を得られたのか?
その候補として、豊富なシリカが土壌にあるという話題が挙がっている。
シリカといえば、玄武岩質的な地質ではシリカ濃度は低くなるので、単純に土壌にシリカが豊富にあるからという話題は通用しないはず。
この話題で必要になってくるのが、土壌中に含まれるシリカ、すなわちケイ酸塩の構造だろう。
というわけで、ケイ酸塩のことを深く知ってみることにする。
先に伝えておくと、ブルーバックスから出版されている3つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたちという本の113ページから始まる第4章 石のサイエンスの内容が非常に分かりやすかった。
他にも鉱物の構造の本を読んでみたけれども、上記の本の方がイラストでイメージがしやすい。
火山が噴火して地上にマグマが吹き出した時、もしくは火山下にあるマグマだまりが冷えて岩石になる時、マグマ内に溶けている様々な原子同士が結合して鉱物となる。
その過程においてケイ酸塩というものが形成されるが、ケイ酸塩には様々なバリエーションがある。
はじめに粘性が非常に低いマグマでできる
※図:3つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち|講談社BOOK倶楽部 128ページより引用
単独型のネソケイ酸塩鉱物がある。
イラストに記載されている通り、かんらん石がこれにあたる。
これから記載するイラストでも同様だけれども、注目すべきはケイ酸(丸が4つ繋がった形)がどのように存在しているか?とケイ酸の周りにあるミネラルの種がある。
単独型では主に鉄とマグネシウムが入る。
続いて、
※図:3つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち|講談社BOOK倶楽部 133ページより引用
ケイ酸が直鎖状に繋がった単鎖型のイノケイ酸塩鉱物がある。
単鎖型の構造により、単独型では入らなかったカルシウムやナトリウムのような大きめの金属原子が入るようになる。
ケイ酸がお互いに結合することによって、鉱物全体に占めるケイ酸の割合が単独型よりも多くなる。
輝石類が単鎖型になる。
植物が単独型のケイ酸塩と単鎖型のケイ酸塩が根の周辺にあったら、おそらくだけど単独型のケイ酸塩の方が使いやすいはず。
続いて、
※図:3つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち|講談社BOOK倶楽部 135ページより引用
さらにケイ酸同士が結合した複鎖型のイソケイ酸塩鉱物がある。
複鎖型になることで、中間の孔が更に大きくなり、金属原子だけでなく分子も取り込めるようになり、水酸化物イオン(OH)を内部に含むことによって、間接的にではあるけれども、水を含めるようになった(含水鉱物)
角閃石が複鎖型にあたる。
続いて、
※図:3つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち|講談社BOOK倶楽部 138ページより引用
平面的網状型のフィロケイ酸塩鉱物がある。
ケイ酸同士の結合の間の孔が更に大きくなり、アルミニウムを持てるようになった。
アルミニウムと水を含めるようになったということは、これすなわちアルミナケイ酸塩で粘土鉱物となる。
平面的網状型には雲母があり、雲母が変性するとバーミキュライトの粘土鉱物になる。
他にケイ酸同士が立体的に結合しあった立体的網状型のテクトケイ酸がある。
テクトケイ酸には長石と石英がある。
テクトケイ酸はケイ酸の量が非常に多く、ケイ素 : 酸素 ≒ 1 : 2 になる。
長石には様々な種類があり、二次鉱物として粘土鉱物がある。
石英は非常に風化がしにくく、海岸等の風化されつくした砂の構成鉱物として残るもの。
これらの話を踏まえた上で、
(株式会社誠文堂新光社 日本の石ころ標本箱 201ページの図を参考にして作成)
植物にとって吸収されやすいシリカ(ケイ酸)というのはどこにあるのだろう?
石英が風化されにくいという特徴を加味すると、単純に土壌中のシリカの量と見てはいけないだろうな。
補足
今回の話から、栽培の専門書に記載されている日本の土壌にはカリウムが多く含まれているから欠乏症の心配がないという常識が必ずしも正しいわけではないということがわかるだろう。