無酸素性運動の非乳酸性エネルギー供給機構で用いるクレアチンの記事で無酸素性運動のエネルギー供給機構のうち、クレアチンリン酸の方を見た。

今回は余談として、筋肉疲労について見ていくことにする。


よく、運動時に乳酸が溜まる = 疲労という表現をよく見かける。

この表現を最初に見た時、筋組織が乳酸を感知して、体に負のフィードバックをかけて制御すると思っていたが、実際はそうではなさそうだ。


前々回に話題に挙げた田畑泉 1日4分 世界標準の科学的トレーニング - ブルーバックスの本の中程度(ミドルパワー)の運動の疲労の話題で筋細胞内で乳酸が蓄積しpHが低下することによって筋収縮が停止すると記載されていた。

詳細は端折るが、筋細胞内での乳酸の溜まり方には個人差はほぼないにも関わらず、持続できる人がいるというわけで、筋細胞にはpHの変化を緩やかにするようなタンパクが存在しているそうだ。


このタンパクが一体何なのだろう?と検索をしてみたら、 伊藤穣等 低酸素トレ ーニ ングによる緩衝能の改善が高強度運動パフォーマンスに及ぼす影響 - デサントスポ ーツ科学 Vol.2にたどり着き、低酸素トレーニングにより骨格筋のpHの緩衝能力が向上したという話題が記載されていた。


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※低酸素トレーニングという言葉から連想されたイメージ 実際は低酸素の部屋での運動だと思う。


この緩衝能力が乳酸/H+トランスポーターと記載されていたため、この名称で改めて検索をしてみたら、小林正紀 モノカルボン酸トランスポータ4の役割に着目した 疾患と副作用に関する - 研究医療薬学42(7) 485―491 (2016)にたどり着いた。


モノカルボン酸トランスポータ(MCT4)はヒト由来の骨格筋の細胞にて、細胞内で生成された乳酸を細胞外に排出(pH依存的に乳酸を輸送)が見られた。


MCT4によって骨格筋の収縮停止の遅延 = 無酸素性運動の持続力の向上という事が分かったが、ここで1つ新たな疑問が生じる。

細胞外に乳酸を排出して、細胞内のpHが下がりにくくなったのだけれども、乳酸の排出先はおそらく血管内の血液で、血中のpHが下がるとそれはそれでよろしくなかったはず(妊娠時の悪阻の要因)。

ここらへんも緩衝能があるのか?を調べてみることにしたが、詳細は次回にする。


-続く-