前回の記事では味噌の熟成中に常温にも関わらず速やかにメイラード反応が起こっている。
メイラード反応といえば、土の形成における腐植の生成に関与している反応で、味噌の熟成を参考にすれば土の形成の重要な部分が見えてくるかもという内容を記載した。
合わせて、ポリフェノール量の多い黒大豆では味噌の熟成が難しいという内容から、ポリフェノールもメイラード反応に影響を与えているのでは?と追記を加えた。
味噌の熟成と似たような反応として、
米ぬか嫌気発酵ボカシ肥料がある。
詳しい話は米ぬかボカシを作ろう!仕込んでみる!の記事に記載があるが、
米ぬかを主体として、油かすや石灰を加え、少々の水を加えた後、
密封してぬか漬けのようにして、夏であれば3ヶ月、冬であれば静置することで完成する。
封を空けた時に甘い匂いが漂い、褐色(写真の右側)のようになっていれば成功である。
師の元で栽培を学んでいた時、冬の仕事としてボカシ肥の仕込みがあった。
写真を掲載するわけにはいかないので、テキストのみで容器の話をすると、60リットルの密封の容器があって、そこに仕込んだ米ぬかを空気を抜くように押し込んで密封していた。
ボカシ肥を作る時は、
一回で米ぬかを200kg分広げて、かき混ぜて60リットルの容器に入れていたが、少々余った時に容器に試験的に様々な有機物を集めてきては混ぜていた。
その中で一番印象に残っているのが、
この写真のような粗めのウッドチップを米ぬかに混ぜて容器に押し込んで静置したもの。
混ぜた量は仕込みの米ぬかとウッドチップが半々になる程、ウッドチップを大量に入れた。
普通の土壌改良材として利用したらC/N比が高すぎて10年以上もまともなものが収穫できなくなると言われていた代物。
半年後に容器を開けて見てみたら、
この写真よりももっと見事に、しかもウッドチップが入っていたことを忘れてしまうような熟成したボカシ肥になっていた。
米ぬかといった糖分多めのものでウッドチップを包み、嫌気環境下で静置すると、分解しにくいウッドチップでさえ分解がこうも速く進むのか!と驚いた。
今改めて思うと、過酸化水素が自然に発生している個所はどこだろう?の記事で触れたとおり、嫌気発酵中の容器の中の水が過酸化水素になって、その過酸化水素がリグニンに反応して緩み、分解しやすい状況になっていたのだろうか。
リグニンが分解されると黒い液体になる。
この液体が発酵中の米ぬかに付着して褐色になることをメイラード反応と読んで良いのだろうか?と疑問が生じるけれども、それほど見事に発酵された米ぬか嫌気ボカシ肥であった。
今改めて思い返すと、あの時、60リットルの密封容器を介して腐植の形成を体験していたのかもしれない。
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