前回の記事で炊飯時に発生する米の糊化は、米の胚乳部分にあるデンプンが熱によって水素結合が切れ、全体的にゆるくなったところでアミラーゼによってデンプンの断片化が開始される。
ということを知った。
この糊化だけれども、実際のところはどうなっているのだろう?ということで、前々回から紹介している論文を読んでみた。
米飯粒内の糊化進行過程の可視化 - 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online
この論文を要約すると
白米を浸水させると数分後に胚乳の中央付近の短軸方向で分断するようにクラック(ひび割れ)が生じる。
胚乳内部に水が入り込み膨圧によって表面が耐えられなかったのだろう。
しばらく置くと、他の箇所でもクラックが生じ始める。
浸水後の炊飯で、炊飯途中で止めて米粒の糊化を確認してみると、表面とクラックの箇所で糊化が観測された。
よく炊飯前に白米であっても一晩浸水した後に炊飯すると良いとあるけれども、可能な限りクラック数を増やすことによって甘みを感じる要素となるクラックが増えるからだと合点がいった。
※玄米の浸水の場合は米粒付近にあるアブシジン酸を減らすという意味もある
炊き上がり時に光りながら立つというご飯の美味しさの指標は、このクラックの発生のしやすさからくるのだろうか?
米の甘みはデンプンの断片化の発生量によるものだから、これまたクラック数の発生量によるものなのか?
となると、ご飯の美味しさは胚乳に含まれるデンプンがクラックしやすいものということになるのだろうか?
クラックはどの米粒でも大体一緒のような気がするので、実際のところはクラック後にどれだけアミラーゼが活発化するか?
によるものだと思うので、胚乳内にどれだけアミラーゼが含まれているか?が米の美味しさの最大の要因ではないだろうか。
酵素はタンパクなので、胚乳形成時にどれだけタンパクの材料のアミノ酸を胚乳に分配できたか?が米の品質を決定するのではないかと。
アミノ酸は単体であれば甘みを感じたり吸水力に関わったりということもあるので、吸水力に関わるアミノ酸がクラックの発生に影響を与えていたりして?
米粒の吸水が増えれば、重心は自ずと変わるので炊き上がり後のご飯粒が立つという現象も発生するはず。
今回の話が実際のところどうであれ、健全な栽培、光合成の促進にはアミノ酸は大事なので、光合成をしっかりと行えるような生育のサポートが重要になるのは変わらないけどね。
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