台風時のイネの倒伏の話題からはじまったシリカの話。

シリカ ≒ 二酸化ケイ素と捉えると、粘性の高いマグマ由来の火成岩を主の地質とする地域でイネの品質が高くなるはずだけど、そうではない。


というわけで、

前回までは植物にとって吸収しやすいシリカとは?という焦点で話を進めてきた。

植物はどのようにしてシリカを吸収するか?


吸収の有無はなんとなく書いてきたけれども、根本の話でシリカがイネの倒伏防止に有効なのか?

という話題には触れていないため、今回はシリカの効能について調べてみることにする。




前回の記事で紹介したレビューの著者が、レビューの一年前に解説という形で、イネのケイ酸吸収機構 化学と生物 Vol.44 No.7 2006を執筆していたのでこの内容からシリカ吸収の話題をピックアップしてみる。


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図:イネのケイ酸吸収機構 化学と生物 Vol.44 No.7 2006の454ページより引用


この図は紹介した記事の執筆時点でのイネの生育に対するケイ素の有益作用をまとめたもので、a〜eまでの各々のトピックで、左側がケイ酸不足あるいはなし、右側がケイ酸が十分にある場合の比較となる。


ケイ酸はイネの根から吸収されると、植物の体を構成する繊維質の一部と取り込まれ、茎や葉の硬さが向上し、光合成において受光の有利な体制となり生産量が増すとされる。


各々のケイ酸吸収の有益作用の詳細だけど、aは株全体が丈夫になって倒伏しにくくなった。

bは虫による葉の食害が減った。虫はケイ酸含有量の低い葉を好んで食べる。

食害が減ることによって、結果として病気の発生率も減るはず。

作物の病気は虫が運ぶ


cは籾殻がケイ酸によって丈夫になることで病原菌の耐性が増す。

dはリン酸の吸収の仕組みがケイ酸によって効率化されるらしい。

eは組織の硬直化によって、受光態勢が向上する。


今回紹介したものは10年以上前の内容なので、現在では今回のものよりも内容が増えているか?もしくはどこかの項目に誤りがあって減っているか?ということはあるかもしれないけれども、シリカの吸収は結果として光合成が有利になりつつ、倒伏耐性が増すことはわかったので、


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台風でも倒伏しないイネで豊富なシリカによって暴風への耐性が出来たという話題はおそらく正しいということになる。


玄武岩質的な地質(シリカ含有量が低い地質)で、スコアの高いイネが収穫されているところを見ると、シリカとはやはりかんらん石を指しているのだろうか?

植物はどのようにしてシリカを吸収するか?


追記(2019年11月25日に追加)

シリカを肥料で与えたい場合はグリーンタフ(緑色凝灰岩)から採掘した粘土鉱物(モンモリロナイト等)が有効

土を理解する為に石英を見詰める

グリーンタフはどこにある?