先日、某SNSで下記のような質問を見かけた。

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M.O.X(過酸化水素水)の混用についての質問なんですが、銅剤や鉄剤、石灰硫黄剤との混用がダメなのは容易に想像できるのですが、液肥の水溶性カルシウム剤との混用もやはりダメでしょうか?

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この話を始める前に、

M.O.Xについて触れておくと、

液肥タイプの酸素供給剤のことで溶液栽培で重宝される液肥となる。

M.O.X - 株式会社京都農販


過酸化水素についても触れておくと、

化学式がH2O2の活性酸素で、

カタラーゼという酵素を持っている生物であれば、

2H2O2 → 2H2O + O2

のように水と酸素を発生して、

カタラーゼを持っていない生物(主に細菌)であれば死滅する。

酸素供給剤についての可能性に迫る


この活性酸素である過酸化水素が、

鉄等の電子の受け渡しが頻繁なものと触れると

・OHという強力な過酸化水素よりも強力な活性酸素が発生して、

カタラーゼを持つ生物であっても何らかの影響を与えるものになる。

ポリフェノール鉄錯体と酸素供給剤で青枯病の発生を抑制


これらの内容を踏まえた上で本題に入る。




冒頭の質問では過酸化水素と水溶性のカルシウム剤との混用を心配されている。

※以後、カルシウムの事を石灰と記載する。


水溶性石灰を挙げると、根(こん)がある程度強い酸であるものになるので、

ざっと思いつくもので、

・塩化石灰

・硫酸石灰

・硝酸石灰

(水溶性がきわどいもので)

・有機酸石灰(酢酸、クエン酸や蟻酸)

・消石灰(水酸化石灰:pH調整の石灰の中では比較的溶けやすいので水溶性として扱われる)

といったところだろうか。

※強い酸と結合したカルシウム程、水に溶けやすくなる(肥料に関わる者であれば必須の知識)

酸の強さ

石灰だからといってpHを調整できるわけではない


ここでカルシウム剤として重宝する場合、

硝酸石灰では窒素分多めなので用途が異なる。


よく使われる水溶性石灰を再び挙げてみると、

塩化石灰と硫酸石灰あたりになる。


ここから更に頻繁に使用されているものを挙げると硫酸石灰で、

最初に硫酸石灰と過酸化水素の反応を見てみると、


硫酸石灰は水に溶けると、

CaSO4 → Ca2+ + SO42-

となりカルシウムイオンと硫酸イオンになる。


硫酸イオンを硫酸(H2SO4)だとして、

硫酸と過酸化水素を混合すると

H2SO4 + H2O2 → H2SO5 + H2O

過硫酸と呼ばれる強力な酸化剤となる。

※硫酸石灰を使用した時の土壌のpHが酸性の場合

過硫酸 - Wikipedia


この溶液のことをピラニア溶液と呼ぶらしいが、

ピラニア溶液についての記述を抜粋してみると、

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ピラニア溶液とは、硫酸 (H2SO4) と過酸化水素 (H2O2) の混合物であり、基材から有機残渣を除去するために用いられる。この混合物は強力な酸化剤であり、ほとんどの有機物を除去することができ、同時にほとんどの表面を水酸化(OH 基を追加)して高い親水性を持たせることができる。

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ピラニア溶液 - Wikipedia(一部改変)

であるそうだ。


追肥として使用する際は硫酸の濃度が濃くなることはないし、

過酸化水素も上記の説明のように激しく使用するわけではないので、

そこまで心配しなくても良いけどね。


硫酸石灰と過酸化水素の混用が不安で他のは無いか?と次に検討するのは塩化石灰だろう。

次に塩化石灰と過酸化水素の反応を見たいけれども、

今回の記事が長くなったので次回にする。


-続く-


補足

今回の話は硫酸石灰だけでなく、硫酸苦土についても言えること


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