前回の記事で、
アミノ酸の一種であるチロシンに酸素を加えてちょこっと反応を続けるとサリチル酸という物質になる。
このサリチル酸というのは植物ホルモンの一種である。
という内容を記載した。
このサリチル酸の作用を調べれば、植物においてチロシンというアミノ酸がどのような作用であるか?を理解することができるはず。
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サリチル酸はベンゼン環 - OH(フェノール)にカルボキシル基が付いた構造。
サリチル酸について知るために、
講談社から出版されている新しい植物ホルモンの科学 第3版のサリチル酸のページを開いてみると、
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植物は病原菌感染時に多量のサリチル酸を蓄積する。これまでの研究から、サリチル酸が植物の免疫応答を誘導する重要なシグナル分子であることが明らかになってきた。
と記載されている。
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※新しい植物ホルモンの科学 第3版 161ページより引用
ざっくりと解説すると、
植物体内に病原菌が入ってきた時、植物体内でサリチル酸が合成され、そのサリチル酸がトリガーとなって、病原菌から身を守るための酵素群の合成が開始される。
更にまだ断言できる程確立された話ではないけれども、植物体内で大量に合成され余ったサリチル酸は、少し手を加え(メチル化)揮発性にして、
昆虫からの食害等の場合は天敵の昆虫を呼んだり、隣にいる植物が受け取ることによって、隣の植物が免疫応答を活性化させる。
この作用は当然農業でも利用したいわけで、プラントアクティベーターと呼ばれる薬剤(予防薬)として扱われている。
植物の耐病性を向上させる新規化合物を5個発見 | 理化学研究所
肝心の植物体内でのサリチル酸の合成だけど、新しい植物ホルモンの科学 第3版には各植物ホルモンの合成経路が記載されているので、
サリチル酸の合成について確認してみると、
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植物におけるサリチル酸の生合成に関しては、これまでに2つの異なる経路が報告されている。1つは、フェニルアラニンからtrans-桂皮酸を経由して生合成される経路(以下省略)。もう1つの経路は、コリスミ酸からイソコリスミ酸を経由して生合成される経路である。
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※新しい植物ホルモンの科学 第3版 165ページより引用
おや?
チロシンではなく、フェニルアラニンというアミノ酸になっていた。
もう一つ挙がっているコリスミ酸と上の2つのアミノ酸には共通するものがあるので、次回はこれらの有機酸について触れることにする。
-続く-