植物が発する香りは虫に対する忌避作用である可能性があるということを思い出した。
先日の記事の野菜の美味しさとは何だろう?香気で挙げたゴボウの香気物質をGoogleで「香気物質 + 虫」というワードで検索してみたところ、主の要素の一つであるセスキテルペンラクトンで下記の内容が引っかかった。
3 天然物から得られるセスキテルペンラクトン化合物の殺虫作用(一般講演,第61回日本衛生動物学会西日本支部大会講演要旨) | J-STAGE
概要を読むと、キク科のオオグルマが合成するセスキテルペンラクトン化合物がヒトスジシマカ(刺す蚊)とユスリカ(刺さない蚊)の幼虫に対して、刹幼虫作用があったそうだ。
殺虫作用があるとなると、人体にもそれなりの悪影響があるのではないか?
良い香りの野菜は健康でないということになりそうだが、セスキテルペンラクトンに関して興味深い研究内容がある。
京都大学学術出版会から出版されている霊長類進化の科学という本で、病気のチンパンジーの観察という内容が記載されていた。
研究対象となっている地域のチンパンジーには腸結節虫、鞭毛虫やアメーバ等に寄生され、腸結節虫の一部は非常に病原性が高く、食欲不振,体重減少,腸炎,下痢,貧血,意欲喪失から虫垂炎様の激痛まで,中度から重度の症状があるらしい。
体調不良のチンパンジーを観察していたところ、Vernonia amygdalina(以後、V. amygdalinaと略す)というヨモギに似たキク科の植物の苦い髄を食べるという行動が見られ、20〜24時間後に症状が回復していた。
糞中の寄生中卵数の測定すると、摂取前と摂取後で大きく減少していたそうだ。
他に興味深い内容として、親が体調不良であって、V. amygdalinaをした際、付近にいた幼獣が親の残した髄を味見しているという行動も見られたそうだ。
V. amygdalinaの植物化学分析を行ったところ、二種類の生物活性代謝産物の存在を明らかにされ、多数のセスキテルペンラクトンとステロイド配合体等であった。
前述の刹幼虫作用と合わせると、セスキテルペンラクトンの影響は大きいはず。
話はゴボウに戻って、ゴボウの歴史を調べると、日本には中国から薬草として伝来したらしい。
セスキテルペンラクトンは苦味があり、過剰摂取では毒性やアレルギーの原因となったりする。
香り(苦味の物質)があるにも関わらず、甘味や旨味が目立つということは、香気物質であるセスキテルペンラクトンが程よい量で、甘味や旨味とそれらを増強する成分が多いということになる。
味覚修飾作用のあるクロロゲン酸は少量であれば、抗酸化作用がある。
水溶性植物繊維は一部が甘味で残りは整腸作用があり、老廃物を排出しやすくなる。
そこにセスキテルペンラクトンによる内臓に寄生する病原性寄生虫の活動を抑える。
これもまた間接的に大腸がん等の抗癌作用に繋がるはず。
ゴボウにおいて、香りが良くて美味しいというのは健康に繋がると見て間違いなさそうだ。
他に虫に食われる野菜というのは食われない野菜と比較して健康効果は低いということも言える。
追記
セスキテルペンラクトンは多くの植物に含まれ、植物例ではキク科の植物が多く挙げられていた。
そのうちの一つに
ヨモギがあり、ヨモギの苦味の要因の一つにセスキテルペンラクトンがあると考えられる。
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