前回のリン鉱石は何処にある?の記事で、肥料の原料であるリン鉱石がどのような条件で産出されるのか?を記載した。

日本にもリン鉱石を産出する地質の条件はあるだろうけれども、産業レベルでたくさん産出出来る地域というのは限られるらしく、輸出に頼っているという現状がある。

更にはリン鉱石は数十年以内に枯渇すると言われている。

迫り来るリン資源の危機 - 日経サイエンス


上記問題に加えて、日本の栽培ではリン酸肥料の使用の制限は特になく、感と経験に頼る栽培者が多く入れておかないと不安だからと、リン酸肥料を過剰使用してしまうという現状があり、なんとも悲しい状態となっているという現実もある。


最後に触れた内容は置いといて、リン鉱石の枯渇に対して最近ニュース等でよく見かけるトピックがある。


それは、


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下水処理場の汚泥からリン酸を取り出すという内容だ。

若山聖等 下水消化汚泥中のリン組成分布と酸処理による変化 - 土木学会論文集G(環境),Vol.72,No.8,III_243-III_248,2016.に拠ると、下水の消化汚泥と呼ばれる状態の汚泥に硫酸やクエン酸を添加すると溶解性リン酸態リンとして回収できるそうだ。


ただ、これらの酸の各々に課題があって、どの酸が適しているか?といった明確な回答は記載されていない。




ここで重要になるのが、消化汚泥(文献によっては活性汚泥と記載されている)とは何か?だろう。

下水汚泥処理のしくみ | 北見市に拠ると、処理場に集められた下水を圧縮した後、汚泥に含まれる有機物をメタン菌によってメタンや二酸化炭素として排出した後の汚泥を指すそうだ。

この段階の消化汚泥はアルカリ分を多く含む。


この消化汚泥に対して酸でpHを下げることによって、リン酸の回収を行う事が出来ることに繋がる。




ここで改めて、消化汚泥に対して、硫酸やクエン酸の添加に関する話題について触れると、強酸の硫酸を用いると、施設の腐食であったり、望まない重金属も可溶化する可能性がある。

一方クエン酸は消化汚泥の過程で有機物を除去したのに、新たに有機物を加え、施設から排水した後の生態系に影響(BOD)を与える可能性がある。

汚い止水で暮らすヤゴたち


消化処理で有機物を除去する際に発生するメタンに対して、強力な温室効果ガスの一酸化二窒素の記事で記載したが温室効果ガスとしての問題を抱えているので、下水処理は大変だなと。

リン酸の回収以外で汚泥肥料の話題も頻繁に見聞きするようになった。


消化処理を簡略化して、メタンの発生を抑えるという面からも汚泥の活用は今後伸びていくのだろうな。

汚泥肥料に関する基礎知識(一般向け) :農林水産省


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