複合脂質のリン脂質の記事までで、貯蔵型の脂肪の中性脂肪と、細胞膜に関わるリン脂質を見てきた。
脂質で他に大事なものとしてコレステロールがあるが、それは一旦置いといて、
ゴマ等の植物性の食用油に多く含まれる必須脂肪酸について触れることにする。
ゴマ油には不飽和脂肪酸のリノール酸とオレイン酸が多く含まれ、この2つの脂肪酸で全体の8割を占めるそうだ。
ごま油のチカラ|日清 純正ごま油/ヘルシーごま香油|日清オイリオ
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前者のリノール酸が必須脂肪酸に該当する。
※リノール酸はオメガ6と呼ばれている。
このリノール酸が何に用いられているのか?を調べていくことにする。
栄養の基本がわかる図解事典 - 成美堂出版によるとリノール酸の主な働きは皮膚の健康維持、血中コレステロール低下作用とアラキドン酸(γ-リノレン酸含む)の合成に関与と記載されている。
※γ-リノレン酸はリノール酸から合成できるので必須脂肪酸に含めない。
主な働きを見ても、どのように働いているか?はわからないので、アラキドン酸を頼りにしてリノール酸の代謝を整理してみる。
リノール酸は
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γ-リノレン酸、
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アラキドン酸を経て、
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エイコサノイドが合成される。
※上の図はエイコサノイドの一種のプロスタグランジンE2
上記のリノール酸からエイコサノイドまでの過程をアラキドン酸カスケードと呼ぶ。
エイコサノイドはアラキドン酸やエイコサペンタエン酸の代謝物の総称であり、様々な種類があり、様々な働きがある。
アラキドン酸経由で生合成されたプロスタグランジンE2(PGE2)の働きを見てみると、平滑筋収縮作用、末梢血管拡張作用や発熱・痛覚伝達作用があるそうだ。
他のエイコサノイドであるPGD2の働きを見ると、血小板凝集作用や睡眠誘発作用があり、脂肪酸に対するイメージが変わってくる。
話は戻って、リノール酸の合成だけれども、リノール酸はオレイン酸から二重結合が一つ増える形で生合成される。
この反応は人体を含む哺乳類では行う事が出来ないらしく、植物等が行う。
ヒトがリノール酸を摂取すると、人体内の酵素によって二重結合が一つ増え、γ-リノレン酸になる。
ここで気になるのが、オレイン酸 → リノール酸 → γ-リノレン酸の生合成の過程において、リノール酸にするための酵素がかけていて、それ以降の反応(アラキドン酸カスケード)は正常に行われる。
進化の過程において、リノール酸の合成の箇所だけすっぽりと落としてしまったのだろうか?
そうであれば何故リノール酸の合成を止めてしまったのだろう?
アラキドン酸カスケードが飽和脂肪酸から律速的に生合成され続けるのが、人体にとって何らかの問題を発生させてしまうのだろうか?
であれば、リノール酸摂取の過剰症というものが気になってしまう。
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