年末年始に何冊か本を読んだが、講談社から出版されている近藤一博著 疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていたという本が断トツに素晴らしかったので内容を振り返っていきたい。
『疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた』(近藤 一博):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部
本のタイトルが「疲労とはなにか」という探求っぽい名称なので、本書には疲労に関する特効薬のようなものはなく、疲労そのものの解明の過程が記載されている。
何の研究もそうだけれども、解明の過程が記載されている方が、疲労を回復するのはこうだ!といった方法論よりも得られることが多い。
今回の本では、漠然としたイメージの疲労を疲労と疲労感に分けている。
疲労感は統合的ストレス応答(integrated stress response : ISRと表示する)によって産生された炎症性サイトカインが脳に伝わって生じる感覚と定義し、疲労はISRから始まる一連の反応による細胞の停止や細胞死を指す。
※サイトカインは病原菌に感染した時や怪我をした時に活用されるシグナルのようなもの
※本書では疲労には更に生理的疲労と病的疲労の二種類に分けていた。
※本書では炎症性サイトカインの産生は肝臓、心臓、腎臓、筋肉と脳について触れていた
最近疲れたなと感じるのは疲労の初期症状であり、その感覚を放置して活動を続けると、体の至る箇所で障害が発生し蓄積する。
詳しい話(本書の感想)を記載すると長くなってしまうので、この場では記載しないが、疲労や疲労感を文字で整理していくことによって見えてくるものがある。
それは疲労を緩和する可能性のある栄養成分についての話題だ。
本書では疲労回復に関して意外な食材を挙げていた。
疲労では、eIF2αという因子のリン酸化が細胞の停止や細胞死に関与していて、疲労状態ではeIF2αのリン酸化が活発になると記載されている。
※eIF2αのeはeukaryotic(真核生物)、IはInitiation(翻訳開始)、FはFactor(因子)で、リン酸化は因子を活発化することを意味する。
※eIF2αがリン酸化すると末梢神経の炎症性サイトカインの産生が増え、脳の炎症性サイトカインの量が増える
上記の内容に対して、
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米ぬかに含まれるγ(ガンマ)-オリザノールリン酸化eIF2α脱リン酸化酵素の増加(リン酸化eIF2αの不活性化に関与)が見られ、心臓での炎症性サイトカインの産生が抑制されたことが観測されたそうだ。
これは疲労と疲労感の両方が緩和する事を意味するが、疲労や疲労感の回復の為に米ぬかを摂取しても、目立った実感は得られないそうだ。
実感は少ないにせよ、疲労や社会で重要な話題であるため、米ぬかを意識しておいた方が良さそうだ。
幸運なことに栽培の面でも米ぬかは重要なので、より一層稲作を意識しておいて損はないはず。
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