過酸化水素について整理するまでの記事で活性酸素の生成について整理してきた。
活性酸素の生成の概要は
※図:中村成夫 活性酸素と抗酸化物質の化学 - 日医大医会誌 2013; 9(3)165ページより引用
酸素に電子を付与し続けることで、・OH(ヒドロキシラジカル)が生成される。
生体内の話題に限定して話を進めると、生体内で発生した・OHは脂質やタンパク質等を酸化する。
・OHが脂質等を酸化するという現象だけを捉えるだけでも価値はあるのだろうけれども、詳細を知っておいた方が視野が広がるので・OHによる脂質の酸化について見ていくことにする。
脂質の酸化といえば、不飽和脂肪酸が酸化されやすく、多価である程酸化されやすいというイメージがある。
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これは多価不飽和脂肪酸のリノール酸だけれども、二重線がある脂肪酸を不飽和脂肪酸といい、二重線が複数あるものを多価不飽和脂肪酸と呼ぶ。
不飽和脂肪酸に対して、
※図:Tim Vickers, after Young IS, McEneny J (2001). "Lipoprotein oxidation and atherosclerosis". Biochem Soc Trans 29 (Pt 2): 358–62. PMID 11356183.Vectorized by Fvasconcellos. - w:Image:Lipid peroxidation v2.png, パブリック・ドメイン, リンクによるを改変
・OHと反応することによって、脂質ラジカルとなる。
上記の反応を略図にすると、
LH + X・(・OH) → L・ + XH(H2O)
※括弧内の値は例
と記すようだ。
※参考:山本順寛 生体における脂質フリーラジカル 酸化のあしあと 化学と教育 49 巻 8 号(2001年)
これだけでも他の物質(基質)を酸化させるだけの反応性を持っているようだが、ここから更に
※図:Tim Vickers, after Young IS, McEneny J (2001). "Lipoprotein oxidation and atherosclerosis". Biochem Soc Trans 29 (Pt 2): 358–62. PMID 11356183.Vectorized by Fvasconcellos. - w:Image:Lipid peroxidation v2.png, パブリック・ドメイン, リンクによるを改変
酸素による酸化で脂質ペルオキシルラジカルになる。
上記の反応を略図にすると、
L・ + O2 → LOO・
と記す。
更に他の不飽和脂肪酸と反応することで、
※図:Tim Vickers, after Young IS, McEneny J (2001). "Lipoprotein oxidation and atherosclerosis". Biochem Soc Trans 29 (Pt 2): 358–62. PMID 11356183.Vectorized by Fvasconcellos. - w:Image:Lipid peroxidation v2.png, パブリック・ドメイン, リンクによるを改変
脂質ペルオキシドになる。
上記の反応を略図にすると、
LOO・ + LH → LOOH + L・
と記す。
脂質は一度酸化し始めると、酸素がある場所では他の脂質もに影響を与え、酸化し続けるのね。
脂質ペルオキシドが新たなスーパーオキシドの発生に関与するらしいが、ここまでにしておく。