前回、イネ科の緑肥のエンバクのアレロパシーを見た。
緑肥という言葉で連想するのが、
昨年、素晴らしい成果を挙げたネギの間にマルチムギの混作だろう。
スギナが繁茂するような土壌を改善しつつ、アザミウマの防除とネギの生育が同時に良くなったという結果があった。
この時はコムギにある活性アルミナ耐性を挙げて話を進めたけれども、もしかしたらアレロパシー物質の方を見ても面白いことがあるかもしれない。
というわけで調べてみた。
マルチムギは秋蒔きのムギを春に蒔くことで、栽培者の都合の良い生育と花を付けずに枯れるという特徴を利用して緑肥として利用する技術になるので、マルチムギはおそらくコムギだろうということで話を進めると、
コムギのアレロパシー物質は、
By Edgar181 (talk) - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
DIMBOAと略されるアルカロイドだ。
コムギのDIMBOAは構成的に存在する強力な抗生物質で、昆虫、病原性真菌、バクテリアといった広範囲に渡る病原に対する自然防御として働き、トウモロコシのDIMBOAは発根促進に関与する土壌微生物を誘引する作用もあるとか
植物二次代謝産物の多面的な生物活性 Kagaku to Seibutsu 53(10): 648-650 (2015)
このDIMBOAがニセアカシアのアレロパシーで話題に挙げたカテキンが土壌の有機物や粘土に吸着されると活性を失うという特徴が同様にあるならば、
※DIMBOAはポリフェノールではないので、カテキンと同じように話はできないかもしれない
緑肥のマルチムギの活用時に基肥とお礼肥えの両方で施肥設計を見直せば、DIMBOAの腐植化を促進できるかもしれない。
ここで意識する点は、糸状菌(白色腐朽菌やコウジカビの仲間)が活動しやすい環境を設けつつ、DIMBOAをフミン酸に付着させる際の電子の獲得源が常にあることだろう。
緑肥は養分が枯れた環境にタネを蒔くという発想を止めて、次作の基肥で考えていた堆肥を入れて緑肥を活き活きと成長させる環境を用意しつつ、
栽培中に糖を常に一定量供給し続けるように、
粒状の黒糖肥料をマルチムギに追肥しておくと、アレロパシー物質の土壌への吸着が加速するかもしれない。
黒糖肥料には糖の他にアミノ酸を含み、発根や光合成量を増やすであろう金属も含まれているので、単純に成長促進も期待できる。
余談だけれども、様々な植物の生育を抑制させてしまうアレロケミカルを、コウジカビの仲間は宿主が不利にならないように宿主にとって無毒かつ有利になるように形を変えているように見えてくる。
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