ホルモンのように作用するペプチド、システミンで防御タンパクを合成するために関与する植物ホルモンのジャスモン酸を紹介した。
ジャスモン酸と同じような話題でサリチル酸という植物ホルモンがあるけれども、
同じような機能を持っていながら、お互いに拮抗し合うらしい。
何故だろう?ということで、
講談社 新しい植物ホルモンの科学 第3版のサリチル酸の作用について再確認してみた。
と、その前に
ジャスモン酸の作用を見ておくと、
傷害などに応答してプロテアーゼインヒビター遺伝子発現を活発化する。
と記載されていた。
おそらくプロテアーゼインヒビター等というのが正しい解釈のような気がする。
でこのプロテアーゼインヒビターだけど、
酵素名の命名規則で、物質名 + ase(分解する酵素)というものがあるため、
プロテインを分解する酵素という意味でプロテアーゼ。
※詳しくはペプチド結合を加水分解する酵素
この酵素をinhibit(インヒビット:抑制)するということで、
プロテアーゼインヒビターはタンパク分解酵素阻害物質と解釈することができる。
それを踏まえた上でサリチル酸の再確認をしてみると、
病原菌の攻撃を認識した宿主植物では、感染特異的(PR)タンパク質と総称される防御タンパク質をコードする一群の遺伝子の発現が誘導される。これらのなかには、抗菌性タンパク質であるPR1やディフェンシン、糸状菌の細胞壁を分解するキチナーゼやグルカナーゼ、病原菌のタンパク質を分解するプロテアーゼなどが含まれる。
(新しい植物ホルモンの科学 第3版の163ページから抜粋。一部改変)
と記載されていた。
サリチル酸から誘導される酵素の中にプロテアーゼがあった。
一方、ジャスモン酸から誘導される物質の中にプロテアーゼインヒビターがあった。
この2つの物質がお互いに作用し合って、
植物の免疫という観点から見たら作用が拮抗し合っているというイメージで良いのかな?
この話は栽培に当てはめると重大な問題であって、
予防のためにサリチル酸の合成を誘導したら、サリチル酸の方の免疫では効かない病原菌に感染された。
ということが普通に発生するわけで、
ジャスモン酸の方に弱い病原菌の中には、植物にサリチル酸の合成を誘導して(この病原菌にとって)弱体化させた後に感染するものがいるらしい。
プラントアクティベータという予防薬は万能ではないというわけだ。
となると今まで話題に挙がったエリシターと呼ばれるものも、
もう少し深く作用を見てから使用した方が良いということになる。
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