グルタミン酸を前駆体とするGABAあたりの記事で各アミノ酸の働きや、
アミノ酸と等電点あたりの記事でアミノ酸自体の特徴をまとめていると、
薄っすらと見えてきたものがあった。
それは、植物が持つ免疫が何なのか?だ。
防御の植物ホルモン、サリチル酸で紹介したプラントアクティベータはアミノ酸から合成されたサリチル酸を参考に考えられているし、
サリチル酸を受容した際に合成される防御のための酵素は、アミノ酸をつなげて生合成されたタンパク質だ。
ここで一つ古いものであるが一つドキュメントを紹介すると、
植物のホルモン様ペプチドの構造と機能にシステミンというホルモンのように働くペプチドが記載されている。
先に用語の確認だけど、
複数のアミノ酸がペプチド結合でつながるとタンパクになるけれども、
タンパク程の長さではなく、タンパクのような働きをしないものをペプチドと呼ぶ。
タンパクの種類は多種多様でひとまとめにはいえないけれども、
タンパクは1万とか5万といったアミノ酸が結合したもので、
ペプチドは2〜200ぐらいのアミノ酸が結合したというイメージ
先日紹介したグルタチオンはアミノ酸が3個結合したもの。
※正し、ペプチド結合ではない。
次はホルモンに入るけれども、
生体内である器官から他の器官に何らかの合図を送る時、電気信号と物質を合成してから流動するものに乗せ、他の器官で受容するものの二パターンあるけれども、
ホルモンは後者の何らかのものを合成してから、流動するもの(植物であれば師管)に乗せて、他の器官に送る方を指す。
今まで紹介してきたホルモンは小さな分子だけど、
これから触れるシステミンはアミノ酸がいくつか繋がったペプチドで、
このペプチドがホルモンのような働きをする。
システミンの機能は、傷害などに応答してプロテアーゼインヒビター遺伝子発現を活発化する。
上記のドキュメントから作用機構の図を抜粋すると
(図:植物のホルモン様ペプチドの構造と機能の29ページより引用)
どこかしらの器官で傷害を受けた際に合成されたシステミンが他の器官の細胞に移動してきて、
システミンを受容した細胞が防御ホルモンであるジャスモン酸を合成する。
防御ホルモンは冒頭で記載したリンク先の記事にあるサリチル酸もあるけれども、
ジャスモン酸とサリチル酸の大きな違いは、
ジャスモン酸は感染した細胞を殺して栄養分を吸収するタイプの殺傷菌に対する防御応答で、
サリチル酸は生きた細胞に寄生する活物寄生菌への防御応答するホルモンで、
ジャスモン酸とサリチル酸は拮抗する。
(講談社 新しい植物ホルモンの科学 第3版 109ページより引用)
防御タンパクは大量のアミノ酸を使用して合成し、
その防御タンパクの生合成を誘導するのもアミノ酸を利用する。
文中にあるジャスモン酸は脂肪酸から合成されているけれども、
脂肪酸を合成したり、脂肪酸を前駆体にしての合成も酵素タンパクが関与しているので、
どちらにしろアミノ酸というものを軽視することはできない。
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