前回の病気の予防は昆虫を意識し、昆虫から学べの記事で、作物の病気の感染は虫に食害された穴から病原菌が体内に侵入することで発病することが多い為、食害被害を減らすことこそが予防に繋がるという内容を記載した。
であれば、病気の予防は適切なタイミングで殺虫剤を使用することになるわけだけれども、その前に触れておきたいことがある。
というわけでアザミウマと植物の相互関係について調べた時の結果を紹介する。
アザミウマと植物の生物間相互作用とその応用 植物の生長調整 Vol.52, No.1, 39-43 2017
上記の報告ではシロイヌナズナにおいてアザミウマの食害がジャスモン酸類(プロヒドロジャスモン酸:PDJ)の散布によって大幅に軽減された。
※ジャスモン酸は植物ホルモンの一種
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シロイヌナズナはジャスモン酸によって植物誘導防御が発現し、葉で忌避性の二次代謝物が合成される。
アザミウマの食害を受ける前にジャスモン酸(メチル)を前もって植物に処理し、植物の誘導防御を予め高めておいたところ、アザミウマの食害が大幅に軽減された。
アブラナ科植物における植物誘導防御の物質はイソチオシアネートと記載されていた。
今回はシロイヌナズナとジャスモン酸の話題だけれども、おそらく他の作物でも同様の経路があると見て良い。
ジャスモン酸は不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸から過酸化、環化、β酸化を介して合成される。
ジャスモン酸についての他の作用は下記の記事で記載した。
ジャスモン酸はべと病や疫病の予防に繋がる可能性が高いので、
作物を健康に育てつつ、予防薬として使用することで、病気に限らず、虫の食害による病気の発生も予防出来ることになる。
※環境ストレスが高いとサリチル酸やジャスモン酸が働きにくいとされる
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