農薬の研究開発をされていた方から、お役に立つのではということで、アスコルビン酸(ビタミン C)誘導体の抗ウイルス剤としての利用 - 植物防疫 第 70 巻 第 7 号(2016 年)をご教示頂いた。
概要はタイトル通りで、一例としてトマトに対してアスコルビン酸(ビタミンC)誘導体を散布するとウィルス由来の感染症が軽減もしくは遅延されると記載されていた。
試験条件によっては80%近い効果を得られたが、多くは50%付近の効果であった。
作用機構を見るにはRNA干渉(RNAi)を把握している必要があるため、ここでは触れない。
RNA干渉の若手研究者がつかんだノーベル医学生理学賞 - 2006 11 Nature Digest news
栽培している方が知りたい内容はおそらくアスコルビン酸誘導体とは何か?だろう。
というわけで、論文中で挙がっていたアスコルビン酸誘導体を見ることにする。
※図:安定・持続型ビタミンCの発明から大学発ベンチャーの立ち上げと保健機能性食品の誕生までの道程 - 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)132,160~165(2008)の図3より引用
上の図がアスコルビン酸誘導体の一種のアスコルビン酸グルコシドと呼ばれるもので、左側がグルコース(ブドウ糖)で右側がアスコルビン酸(ビタミンC)で右側の環の2の炭素にグルコースが結合している。
ビタミンCは水溶性ビタミンに分類され、反応性が高くすぐに狙った効果が失われてしまうが、アスコルビン酸グルコシドといった配糖体であれば散布後すぐに反応せず、体内でグルコースを外してから初めて狙った効果を発揮するという優れもの。
グルコースを外す反応は細胞内に入ってから、生体の酵素によって行われる。
それ故、食品添加物や化粧品の原料として利用されるらしい。
アスコルビン酸誘導体は他にも脂肪酸と結合したものとかがあるけれども、どれも反応性が高いビタミンCに何かを結合して、反応性を減らしたり、脂溶性ビタミンに変えたりする。
植物の葉ではビタミンCを普通に合成しているけども、ビタミンCの散布によってウィルスの感染が軽減するのは何故か?という疑問が残るが、秀品率向上の新たな課題は亜鉛をどう加えるか?の記事で記載した課題の内容そのものではないかと