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acworksさんによる写真ACからの写真


糖と聞いたら、甘くてカロリー源になるというイメージがある。

ホットな領域で糖鎖科学の読み物あたりに触れると、糖が甘くてカロリー源だけではなく、他に重要な機能を果たしている可能性があることがひしひしと伝わってくる。


例えば、朝倉書店から出版されている栄養機能化学第3版 栄養機能化学研究会編集の糖質のページを見ると、グルコース(ブドウ糖:光合成産物)の人体における機能として、

・エネルギー供給機能(血流に載って各組織に糖を運搬)

・エネルギー産生機能

・エネルギー貯蔵機能(グリコーゲンや脂肪に変換して)

・アミノ酸への合成の素材供給機能

・生合成推進物質供給機能(NADPH)

・核酸成分供給機能

・生体成分供給機能(糖タンパク、糖脂質)

・解毒物質供給機能(UDP-グルクロン酸)

等がある。

※上記の内容は糖鎖とは関係ないものもある

植物は水から得た電子をどうやって蓄えている?


植物では更に細胞壁やペクチンの材料という機能もある。

植物に話を移し、植物は光合成産物である糖と窒素源となるアンモニアから様々な物質を合成していることを考えると、エネルギー以外で何らかの素材供給機能があるのはなんとなくわかる。

糖の万能性

ペクチンは何から出来ている?


上記で挙げた項目の中でイメージが難しいのが、最後の解毒物質供給機能だろうか。

これは一体何なのだろう?植物においても解毒物質供給機能はあるのだろうか?

もしあれば、ここに生産性や病害虫に対する耐性の向上の要因があるかもしれない。


というわけで、UDP-グルクロン酸から辿ってみることにした。




Beta_D-Glucuronic_acid

Yikrazuul - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる


UDPが外れた状態のグルクロン酸を見てみる。

グルクロン酸はグルコースから合成され、反応性が高く、動物では毒性のあるものと反応して解毒しつつ体外へ排出する役割を持つ。

この作用をグルクロン酸抱合と呼ぶらしい。

グルクロン酸 - Wikipedia


これらの内容を踏まえた上で、植物 + グルクロン酸のキーワードで検索をしてみると、

石川考博 光合成生物におけるアスコルビン酸生合成研究の新展開 生化学 第83巻 第9号(2011)

という読み物が引っかかった。


植物に限らず、光合成が出来る生物において、


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水溶性ビタミン - 厚生労働省 226ページ目より引用


ビタミンCことアスコルビン酸の生合成についてが記載されている。

遥か昔に植物が上陸にあたって獲得した過剰な受光対策


アスコルビン酸はグルクロン酸がグロン酸を経て合成され、この経路をD-グルクロン酸(D-GulUA)経路と呼ぶらしい。

他にガラクツロン酸やガラクトースからもアスコルビン酸を合成する経路があり、それぞれをD-ガラクツロン酸(D-GalUA)経路、D-マンノース/L-ガラクトース(D-Man/L-Gal)経と呼ばれている。

ペクチンは何から出来ている?


糖の理解を進めると、人生が豊かになるかもしれない。

そう思わせる程、糖には知見が詰まっている。


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